実施例

RNA-direct 実施例4 1-step Realtime PCRによるプロテインキナーゼ発現定量

リアルタイムPCRを用いて目的の遺伝子の発現量を測定する方法には、まずRNAをcDNAに変換し、それを鋳型としてリアルタイムPCRを行う『2-step反応系』と、RNAを鋳型として逆転写反応とリアルタイムPCRを連続的に行う『1-step反応系』とがあります。1-stepリアルタイムPCRは、試薬の分注操作が1回で済み、ハイスループット化に適しています。また、サンプル間のクロスコンタミネーションの危険性も低減します。
RNA-direct ® Realtime PCR Master Mixは、Thermus thermophilus HB8株由来のTth DNA Polymeraseが、2価のマンガンイオン(Mn2+)存在下において強い逆転写活性を示すことを利用した、1酵素系による1-stepリアルタイムPCR用2xマスターミックスです。耐熱性DNAポリメラーゼを用いた逆転写反応は、一般の逆転写酵素と比較して、反応を高温で実施できるため、立体構造をとりやすい鋳型RNAからの増幅や、逆転写反応の特異性を高めるのに適しています。

本実験では、RNA-direct ® SYBR™ Green Realtime PCR Master Mixを用いてnovel Protein Kinase C(nPKC)のサブタイプごとのヒト各種組織別発現プロファイル解析を実施しました。また、2-step反応系との結果を比較しました。


<実験方法>
【サンプル】
10種類のヒト由来Total RNA(脳、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、小腸、筋肉、肺、胃、大腸)を鋳型として用いました。各反応系(20μL)に対し、それぞれ50ngのtotal RNAを添加して解析を行いました。またこれらとは別に、検量線作成用として上記10種のtotal RNAのうち4種(心臓、脾臓、筋肉、肺)をピックアップして混合したものについて、200ngおよびその5倍希釈系列を作成し、それぞれ同時に反応を行いました。

【プライマー】
PKCδ、PKCε、PKCη、PKCθそれぞれに対して、イントロンを跨ぐ約150~170bpの領域を増幅するように、それぞれ20mer前後の鎖長を持つプライマーを設計しました。また、サンプル間のmRNA量を補正するために、β-Actinを内部標準として使用しました。プライマー濃度は各0.2μMに設定しました。各プライマーの配列を下方に示します。



【反応機器・条件】
Applied Biosystems® 7900HTを使用して、右の条件にて増幅検出を行いました。


<結果および考察>
1. β-ActinおよびPKCの標準曲線作成
相対定量に用いる検量線用のスタンダードとして、nPKCの発現が高いと予想された4つの臓器由来のtotal RNAを混合したものを希釈して用いました(200×5-nng(n=0,1,2…))。まず、それぞれCt値より、β-Actinおよび各PKCサンプルの検量線を作成しました。また同時に、それぞれの組織由来のサンプルを1反応あたり50ng、および200ngを用いて同様に増幅しました。

その結果、鋳型量とCt値との相関性は極めて良好であることが示されました。β-Actinの検量線を右に示します。また、融解曲線解析の結果、プライマーダイマー等の生成は確認されませんでした。相対定量の場合、プラスミド等にクローニングした遺伝子から転写反応を用いて合成したRNAを定量のスタンダードにする方法もありますが、今回のように単に生体より抽出したRNAを希釈して用いるだけでも問題なく検量線を作成できました。


2. PKC各サブタイプの組織毎の発現量算出
β-Actin、およびPKC各サブタイプの検量線を用いて、それぞれの遺伝子の組織別存在量を算出しました。次に、β-ActinのmRNAの相対量で補正し、各組織における各PKCの相対発現量を算出しました。

その結果、PKCε、PKCθにおいて、組織別発現量分布が大きく偏っていることが明らかになりました。この結果は既に報告されている情報1)2)と良く一致していることが確認できました。また今回、50ngと200ngのtotal RNAを用いてPCR反応を行い、それぞれ相対値を算出しましたが、どちらの濃度のRNAにおいてもほぼ同じ結果を示しました。





3. 2-step反応系との結果比較
1-step反応系と2-step反応系(逆転写反応とリアルタイムPCRとを別に実施)の結果に整合性があるかどうかを確認するため、弊社高効率逆転写キットReverTra Ace -α-® [Code No. FSK-101]と、リアルタイムPCRキットSYBR™ Green Realtime PCR Master Mix -Plus- [Code No. QPK-211] とを用い、核酸増幅リアルタイムモニタリング装置:LineGene(BioFlux社)による2-stepリアルタイムPCRを実施した場合との結果の比較を行いました(PKCδのみ実施)。

その結果、右に示すように、両者の結果はほぼ一致しており、1-step反応系による結果は2-step反応系と同等の信頼性があり、2-step反応系から1-step反応系への移行も容易であることが示されました。

参考文献
1)Akita Y. et al., J Biol Chem. 265:354-362(1990)
2)Osada S. et al., Mol Cell Biol. 12:3930-3938 (1992)

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