コーヒーブレイク
エクソソームからmiRNAを検出してみた!
■はじめに
東洋紡からマイクロRNA(miRNA)解析用のcDNA合成キットが販売されました!
ということで、今回はmiRNAに関する実験の紹介です!
miRNAは遺伝子の発現制御に関わる20~25塩基程度の一本鎖RNAであり、発生、分化、細胞増殖など様々な分野で研究が行われています。特にがんへの関与が多数報告されており、miRNAを用いた診断への応用も期待されていますね。
最近では、miRNAなどの核酸物質がエクソソームに内包され、miRNAがエクソソームを介して細胞間で伝達されることも示唆されています。エクソソームとmiRNAに関わる研究も加速していきそうです。
今回はエクソソーム内のmiRNAに関して、エクソソームからRNAを精製することなく検出できるかを試してみました。
■実験方法
[エクソソームの回収・cDNA合成]
HeLa細胞の培養上清のエクソソームを濃縮、精製し、エクソソーム内のmiR-21の検出を行いました。
エクソソーム内のmiR-21のcDNA合成は、①エクソソームから精製したRNAを鋳型にした場合と、②SuperPrep® miRNAssay™ Cell Lysis & RT Kit for qPCR[Code No. MIR-201]を用い、RNA精製することなく、エクソソームをライセート化したものを鋳型にした場合の2種類で行いました。合成されたcDNAはTHUNDERBIRD® Probe qPCR Mix[Code No. QPS-101]を用い、リアルタイムPCRで解析を行いました。
HeLa細胞の上清20mLをVIVAPIN® 20(10,000MWCO)を用いて、1mLまで濃縮し、MagCapture™ Exosome Isolation Kit PS Ver.2を用いて、エクソソームを精製しました。(エクソソームの溶出液量50μL)
(1) 精製したエクソソームをRNA精製キット(microRNA Extractor® SP Kit)で精製し、精製RNAを鋳型に、miRNAssay™ qPCR RT Master Mix[Code No. MIR-101]を用いて、以下のようにcDNAを合成しました。
反応液組成
5×RT Master Mix 2 μL
TaqMan® miRNA Assay 20×RT Primer 0.5 μL
RNA溶液(培養上清0.27mL分) 2 μL
Nuclease-free Water 5.5 μL
Total Volume 10 μL
反応条件
16℃, 30min
42℃, 5min
95℃, 5min
4℃, hold
(2) 精製したエクソソームそのものをサンプルとし、SuperPrep® miRNAssay™ Cell Lysis & RT Kit for qPCR[Code No. MIR-201]で、以下のようにcDNA合成しました。
反応液組成
Lysis Solution 9.78 μL
RNase Inhibitor 0.17 μL
gDNA Remover 0.05 μL
エクソソーム(培養上清2mL分) 5 μL
Total Volume 15 μL
反応条件
室温, 5min
70℃, 2min
4℃, hold
反応液組成
5×RT Master Mix 8 μL
TaqMan® miRNA Assay 20×RT Primer 2 μL
上記ライセート 8 μL
Nuclease-free Water 22 μL
Total Volume 40 μL
反応条件
16℃, 30min
42℃, 5min
95℃, 5min
4℃, hold
[リアルタイムPCR]
THUNDERBIRD® Probe qPCR Mix[Code No. QPS-101]を用い、以下のように得られたcDNAそれぞれを検出しまし
反応液組成
THUNDERBIRD® Probe qPCR Mix 10 μL
TaqMan® miRNA Assay 20×Primer・Probe 1 μL
50×ROX Reference dye 0.4 μL
Nuclease-free Water 6.6 μL
各cDNA溶液(それぞれ培養上清53μL分) 2 μL
Total Volume 20μL
PCRサイクル条件
使用機器:Applied Biosystems® StepOnePlus™ リアルタイムPCRシステム
95℃, 30sec
↓
95℃, 5sec
60℃, 30sec 50 cycles
■結果
(1)精製RNAを鋳型にcDNA合成したものと、(2)エクソソームからRNA精製を行わずにcDNA合成したもので、同じ増幅曲線が得られました。この結果からRNA精製を経たものとRNA精製なしのものでcDNA合成効率がほぼ同等であることが示されますRNA精製は非常に煩雑です。SuperPrep® miRNAssay™ Cell Lysis & RT Kit for qPCRを使用することでRNA精製の手間やロスを省いてmiRNAを正確に解析することが可能になります。
これらの結果は用いるサンプルによっても異なりますので、あくまで参考としてお楽しみください。
■さいごに
今回使用した製品はこちら
培養細胞・エクソソーム溶解試薬付き miRNA解析用cDNA合成マスターミックス
SuperPrep® miRNAssay™ Cell Lysis & RT Kit for qPCR
●培養細胞、エクソソーム中のmiRNAを精製無しでcDNA合成可能。
* VIVAPIN® は、Sartorius Lab Instruments GmbH & Co. KGの登録商標です。
* MagCapture™は、富士フイルム和光純薬株式会社の商標です。
* microRNA Extractor® は、富士フイルム和光純薬株式会社の登録商標です。
* Applied Biosystems® は、Applied Biosystems Inc.の登録商標です。
* StepOnePlus™ は、Applied Biosystems Inc.の商標です。
* TaqMan® は、Roche Diagnostics K.K.の登録商標です。