コーヒーブレイク
コンタミネーションを防ぐには?
■はじめに
PCRにおいて、ネガティブコントロールからも遺伝子の増幅が見られ、困ったことはありませんか?
PCRは非常に感度の良い実験手法になり、ごく微量でも以前に行ったPCR産物が混じる(コンタミネーションする)と偽陽性が生じたり、正しく定量できなくなったりしてしまいます。
コンタミネーションはなぜ起こる?
⇒PCR産物は108~1010コピー/μLと、非常に高コピーになることが知られています。一旦、これらのDNAが環境を汚染してしまうと、環境下のDNAは数日では無くなりません!
以下は、合成DNAをプラスチックバッドに塗布・乾燥させ、1~7日後に拭き取り回収・リアルタイムPCRを実施し、DNAの減少を評価した実験結果です。
7日後のDNA残存率はおよそ20%!!
時間が経過しても汚染場所にDNAが残り続けており、汚染された場所を触ったり踏んだりすることでDNAが実験室に拡散されてしまいます。このようにDNAは非常に安定であり、一旦、PCR産物が環境中に出てしまうと、実験室自体が汚染し、コンタミネーションが生じてしまうことが考えられます。
コンタミネーションを防ぐには?
1.PCR反応後のチューブを不用意に開けない
2.実験した手袋を付けたまま、実験器具を触らない
3.dUTPを含む試薬を使用する
などの方法があります。
今回は、上記のdUTPを含む試薬を使用して増幅したPCR産物が、反応試薬にどれくらい混入しても問題ないのか、実際に検証してみました!
■実験方法
dUTPを含むリアルタイムPCR試薬であるTHUNDERBIRD® Next Probe qPCR Mix[Code No.QPX-101]を用い、196bpのターゲットの増幅を行いました。
そのPCR産物(10⁴コピー、103コピー)を鋳型とし、Uracil-DNA Glycosylase(UNG), Heat-labile[Code No. UNG-101]添加後に、再度、1回目のPCRと同じターゲットの増幅を行いました。
反応液組成
滅菌水 XμL
THUNDERBIRD® Next Probe qPCR Mix 10μL
Forward Primer 6pmol
Reverse Primer 6pmol
TaqMan® Probe 4pmol
50×ROX Reference dye 0.4μL
UNG 0.4U
PCR産物(104コピー、103コピー) 2μL
Total Volume 20μL
PCRサイクル条件
使用機器:Applied Biosystems® StepOnePlusTMリアルタイムPCRシステム
25℃, 10min
95℃, 20sec
↓
95℃, 5sec
60℃, 10sec 40 cycles
■結果
その結果、UNG添加したことで10⁴コピー、103コピーともに1回目のPCR産物が分解され、2回目のPCRでは、増幅が認められませんでした。dUTPを含んだPCR産物は、UNGを添加することで104コピー程度のコンタミネーションであれば分解できることが示されました。dUTPを含んだPCR試薬とUNGを用いることで、多少のコンタミネーションが起きても安定的な結果が得られることが期待できます。コンタミネーションが不安な方は是非、dUTPを含んだPCR試薬とUNGを使用してみてください。
これらの結果は用いるサンプルや解析する遺伝子によっても異なりますので、あくまで参考としてお楽しみください。
また、もしコンタミネーションが起こってしまったら
・実験台や床を0.5%程度の次亜塩素酸溶液で拭く(エタノールでは完全に除去できません。)
・試薬類、滅菌水の交換
・PCRを行う部屋を変える
などの方法が有効です。
■さいごに
今回使用した製品をご紹介します!
高効率リアルタイムPCR用マスターミックス
THUNDERBIRD® Next Probe qPCR Mix
●幅広いダイナミックレンジ
高効率かつ特異的な増幅が可能であり、広い測定レンジでの解析が可能。
●伸長10秒の高速サイクルに対応
伸長時間10秒の高速PCRでも検出が可能。
●調製した反応液の安定性向上
プライマー・テンプレートを混合した状態での安定性が向上。
●PCR阻害物質存在下での定量性・マルチプレックス性能向上
●キャリーオーバーによる擬陽性防止
本製品にはdUTPが含まれており、別売りのUracil-DNA Glycosylase(UNG)を使用することで、キャリーオーバーコンタミネーションによる偽陽性を防止することが可能。
* Applied Biosystems® は、Applied Biosystems Inc.の登録商標です。
* StepOnePlusTM は、Applied Biosystems Inc.の商標です。
* TaqMan® は、Roche Diagnostics K.K.の登録商標です。