実施例
KOD FX 実施例32 キイロショウジョウバエの羽からの簡便なロングPCR法
【背景】
PCRによるショウジョウバエのGenotypingでは従来はショウジョウバエ全身からDNA抽出を行う必要がありました。本法ではショウジョウバエを生かしたまま簡便に変異の同定が可能なため、判定後の繁殖や他のアッセイが可能であり実験効率の改善・資材の節減をはかることができます。
【サンプル】
ショウジョウバエの羽
【前処理】
ショウジョウバエの羽を麻酔下で根本から切断し、マイクロチューブのアルカリ液に浮かべます。溶液はHotSHOT法 (Truettら2000年)に従いました。ただし、アルカリと中和は同量になるように調節しました。
【ターゲット】
ショウジョウバエRh5遺伝子 2.1kb, 5kb
【プライマー】
2.1 kb (2,135bp)
Primer F1, 5’-GGATTTTCGAGTTGCCATGT-3’
Primer R1, 5’-GTCCGTGTTGGTCAGGTAAT-3’
5kb (4,952bp)
Primer F1; Primer R2, 5’-GCAAGTGCGAAATGGGTGTA-3’
3.2kb (3,254bp)
Primer F1; Primer R3, 5’-CGTATTCGGATTGGTTGGAT-3’
*終濃度で0.01~0.002%となるようにTriton X-100を添加することでより増幅効率を高めることができます。ただし、プライマーによっては非特異的増幅が増える場合があります。
※Taq DNA polymeraseは推奨条件に従って行いました。
【結果】
KOD FXを用いることで、ショウジョウバエ羽ライセートから5kbまでの増幅を確認することができました。
なお、未処理の羽を直接PCRに用いてもKOD FXで増幅でき場合がありましたが、HotSHOT法で作製したライセートの方が格段に効率的で安定した結果が得られました。
ショウジョウバエ平均棍や頭などのライセートでも同様の結果が得られました。羽の末端側半分では十分な増幅は得られませんでした。全身のライセートを作製するときはピペットチップやビーズで外骨格を壊す必要があります。また、羽と比べ全身では非特異的な増幅が起こり易い場合がありましたのでライセートの液量を増やすか希釈することを推奨します。
Triton X-100添加の効果の検証実験(補助資料)
Rh5 遺伝子の野生型(3.2kb)と欠失変異体(1.7kb)のGenotypingを羽ライセートで行いました(Hanai&Ishida 2009年)。ここで使用したプライマーセットは効率が低く、3ステップサイクル、Tx100なしでは3 kbの増幅は皆無でした(a)。 Triton X-100をPCR反応液に最終濃度0.01%で添加することで、良好な結果を得ることができました(b)。
【データご提供】
独立行政法人 産業技術総合研究所
生物機能工学研究部門 生物時計研究グループ
花井修次 先生
【先生からのコメント】
本実験にKOD FXを用いる利点は、以下のとおりです。
1.トランスポゾンを使った遺伝子破壊を行う際に、増幅長が長いことはとても有利です。
2.簡単なDNA抽出で、ハエを生かしたままスクリーニングでき、目的のものだけを交配できるので労力が大幅に減らせました。
【参考文献】
Truett, GE, Heeger P, Mynatt, RL et al (2000) Preparation of PCR-quality mouse genomic DNA with hot sodium hydroxide and tris (HotSHOT). Biotechniques 29: 52, 54.
Hanai, S and Ishida, N (2009) Entrainment of Drosophila circadian clock to green and yellow light by Rh1, Rh5, Rh6 and CRY. Neuroreport. 20:755-8.
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