実施例
KOD FX 実施例4 Long PCRにおけるPrimerの精製グレード及び鎖長の影響
【実験方法】
下記の反応液組成にて、ヒトゲノムβ-globin領域の17.5kbをターゲットとして検討を行いました。また、PCRサイクルは、KOD FXの標準推奨条件である2ステップと、long PCR用に推奨しているステップダウンの2通りにて行いました。本検討にて使用したPrimerの配列等を、表1に記載しました。
(1)反応液組成 (2)サイクル条件
2× PCR buffer for KOD FX 25 μL
2mM dNTPs 10 μL
10pmoles /μl Primer F 1.5 μL
10pmoles /μl Primer R 1.5 μL
Human Genomic DNA (50ng/μL) 1 μL
KOD FX (1.0U/μL) 1 μL
Autoclaved, distilled water up to 50 μL
【結果および考察】
(1)long PCRにおけるPrimer精製グレードの影響
脱塩、カートリッジ精製、及びHPLC精製の3通りの方法にて精製したPrimer(表1のA及びB)を用いてPCRを行い、Primerの精製グレードの違いによるPCRパフォーマンスを比較評価しました。その結果(図1)、脱塩グレードでは、2ステップ、ステップダウンのいずれのサイクル条件においても、目的バンド以外にスメアが出やすい傾向にあることが分かりました。一方、カートリッジ精製とHPLC精製グレードでは、両者で大きな差はなく、ステップダウンのサイクル条件では目的バンドのみの明瞭な増幅を得ることができました 。この結果から、長いターゲットを増幅する場合、カートリッジ精製以上のグレードのプライマーを用いた方がより良い結果が得られることが分かりました。
(2)long PCRにおけるPrimer長の影響
次に、long PCRにおけるPrimer長の影響を見るため、40merから18merまで2base刻みで長さを変化させたPrimerを調製(表1のNo.1~12、精製は、いずれもカートリッジ精製グレード)し、PCRを行いました。その結果(図2)、2ステップのサイクル条件では、40~24merでターゲットの増幅が認められ、同時に出現したエキストラバンドはPrimer長が長い程少ない傾向にあることが分かりました。一方、ステップダウンのサイクル条件では、40~28merでターゲットの増幅が得られ、エキストラバンドはPrimer長に関わらず出現しませんでした。この結果から、long PCRでは、通常より長めにPrimerを設計し特異性を上げると共に、アニーリング(及び伸長反応)を比較的高い温度に設定することでより良い結果が得られることが分かりました。
以上より、KOD FXを用いるlong PCRは、(1)カートリッジもしくはHPLC精製グレードのプライマーを用いる、(2)プライマーは長めに設計し、アニーリング温度を高めに設定する、(3)必要に応じてステップダウンPCRを行う、ことがポイントとなるといえます。