実施例
Tripluc Luciferase Assay Reagent 実施例2 転写因子AP1、NFκB活性化の同時解析
MultiReporter Assay System -Tripluc®- (以下Tripluc®システム)は、緑色(SLG)、橙色(SLO)、及び赤色(SLR)の3色のルシフェラーゼを用いるマルチリポーターアッセイシステムです。1色を内部標準として、残りの2色を用いて、2種の被験配列(プロモーターなど)の転写活性の評価を同時に行うことができます。このアッセイ系を用いることにより、2種の被験配列の活性に関する厳密な比較が可能になります。
転写因子AP-1、NFκBは、ともに広範な生命現象に重要な役割を果たすことが知られています。そのため、炎症性刺激や酸化ストレス応答、発ガン、分化、アポトーシスなどにおいて、これら転写因子の活性化を並行して評価することが多く行われています。
MultiReporter Assay System -Tripluc®-を用いて、これら転写因子の活性化、あるいは阻害剤の効果を同時にモニターした例をご紹介いたします。
【方法】
1. リポーターコンストラクトの構築
pSLO-test [Code No. MRV-102]、pSLR-test [Code No. MRV-103] の各ルシフェラーゼ遺伝子の上流にHSVtkプ ロモーターを挿入し、そのさらに上流にAP1結合配列( 5 ' -ATGAGTCAA-3 ' 、6 コピー)、N FκB 結合配列( 5 ' -CGGAAAGTCCA-3'、6コピー)をそれぞれ挿入した、pAP1- SLO、pNFκB-SLRを構築しました。
2. トランスフェクション
96ウェル白色不透明プレート(ナルジェ・ヌンク社、Code No. 136101)にHeLa S3細胞を1ウェルあたり2×104cells (100μL DMEM+10% FBS)播種し、24時間培養しました。翌 日、1ウェルあたり、0.09μg pAP1-SLO、0.02μg pNFκBSLR 、及びインターナルコントロールとして0.09μg pSLGHSVtk control [Code No. MRV-301] を混合し、さらに0.5 μL LipofectamineTM 2000(インビトロジェン社)と混合した 後、細胞に添加しました。また、各ルシフェラーゼのフィルター透 過率を設定するために、pSLG-SV40 control [Code No. MRV-201]、pSLO-SV40 control[Code No. MRV-202]、 pSLR-SV40 control [Code No. MRV-203]をそれぞれ 0.2μgトランスフェクションしました。この細胞を37℃、5% CO2下で24時間インキュベートしました。
3. アッセイ
PMAによる活性化試験では、トランスフェクションを行った細胞の培養液を除去し、0、1、10、100nMのPMAを含む培地100μLを加え、5時間インキュベートしました。
阻害剤アッセイでは、トランスフェクションを行った細胞の培養液を除去し、グラフに示された濃度の化合物を含む培地100μLを加え、10分間インキュベートした後、さらに1mMのPMAを含む培地10μLを加え、5時間インキュベートしました。
ルシフェラーゼアッセイは、細胞培養液をそのままで、等量(100μL)のTripluc® Luciferase Assay Reagentを加えて10分間インキュベートした後、パーキンエルマー社ARVOTMMXにセットし、光学フィルター①660nm:半値幅100nm(Filter3)、②595nm:60nm (Filter2)、③波長510nm:半値幅60nm(Filter1)存在下でそれぞれ、2sec./ウェルで測定しました。透過率設定用のサンプルについてはさらに、フィルター非存在下で全光を測定しました。
【結果】
透過率設定サンプルから、それぞれのルシフェラーゼのフィルター透過率(例えばFilter1透過率は、Filter1測定値/Filter非存在下測定値)を決定しました。続いて、試験ウェルの測定値から各ルシフェラーゼの活性値を算出しました。SLO、SLRの活性値をインターナルコントロールとしたSLGの活性値で割り返し(SLO/SLG、SLR/SLG)、サンプル間の標準化を行いました。
N=3の平均値を算出し、SLO/SLG、SLR/SLGについて、それぞれPMAに よる刺激処理や阻害剤処理のないサンプルの値を1として相対活性をグラフ にプロットしました。
その結果、AP-1、NFκBの活性化において、PMAに対する濃度依存性が 認められました(図A)。阻害剤に対しては、AP-1、NFκBの活性化いずれもプロテインキナーゼCの阻害剤であるRo-32-0432、BDMI (Bisindolylmaleimide I)については濃度依存的な阻害が認められました が、チロシンキナーゼ阻害剤であるAG1478については有意な阻害は認め られませんでした(図B上)。PMAによる活性化はプロテインキナーゼCを 介して成立しますので、その効果を適切に評価できたといえます。
また、APDC(Ammonium Pyrrolidinedithiocarbamate)はNFκB活 性化の選択的な阻害剤として知られる化合物ですが、実際に特異的な阻害を 観察することができました(図右)。
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