実施例

ReverTra Ace 実施例5 反応効率・伸長性能と逆転写反応温度の検討

「ReverTra Ace®」の反応効率、および伸長性を確認するために、高次構造を取りやすく、逆転写が難しいとされる18SリボソームRNAを鋳型とした逆転写反応において、他社の逆転写酵素と比較を行いました。

【実験方法】
(1)使用酵素
・ReverTra Ace® [Code No.TRT-101]、100U/μL、推奨反応温度42℃)
・A社逆転写酵素(改変型M-MLV RTase、200U/μL、推奨反応温度42℃)
・B社逆転写酵素(改変型M-MLV RTase、200U/μL、推奨反応温度55℃)

(2)逆転写反応
まず、鋳型となる200ngのHeLa細胞由来total RNAと、4 pmolの配列特異的リバースプライマー(5’-GTTCGACCGTCTTCTCAGCGCTCC-3’)、各逆転写酵素推奨量のdNTPs、およびRNase-free水を混合し(合計液量13μL)、65℃、5min.インキュベート後、氷上で急冷して、プライマーのプレアニーリングを行いました。その後、各逆転写酵素の反応バッファー、40UのRNase inhibitor、2μLの各逆転写酵素、およびRNase-free水を混合し(合計液量20μL)、42℃または55℃、20分間の逆転写反応を行い、最後に、85℃、5min.処理することにより、酵素を失活させました。

(3)PCRによる検出
(2)で調製した逆転写反応液を鋳型として、KOD FX [Code No. KFX-101] を用いてさまざまな鎖長領域のPCRを行いました。リバースプライマーは逆転写反応で用いたものと同一のもの、フォーワードプライマーはプライマー#1(5'-TGACGGAAGGGCACCACCAGGAG-3'、増幅鎖長600bp)、プライマー#2(5'-AGCTAGGAATAATGGAATACGACCGC-3'、増幅鎖長950bp)、プライマー#3(5'-TAACGAGGATCCATTGGAGGGCAAGC-3'、増幅鎖長1220bp)、プライマー#4(5'- GCCATGCATGTCTAAGTACGCACGG -3'、増幅鎖長1760bp)を、それぞれ5pmol使用しました。その後、逆転写反応液2μLを用いて、反応液量25μLで、温度条件98℃ 2min. →(98℃ 10sec. → 68℃ 2min.)×30サイクルのPCRを行いました。PCR終了後、電気泳動を行い、目的バンドのシグナル強度、非特異バンドの出現パターンにより逆転写反応効率、および特異性を評価しました。

【結果および考察】
結果を左に示します。cDNA合成量、および伸長距離のいずれにおいてもReverTra Ace®が最も良好な結果を示しました。エキストラバンドがみられるものがありますが、それは、rRNAの複雑な立体構造が原因で逆転写のスリップが原因で生じた短い増幅産物であると考えられます。ReverTra Ace®は最もエキストラバンドが少なく、特異性の高い逆転写が行われていることが示唆されました。また今回、逆転写の反応温度を2水準(42℃および55℃)で比較しましたが、いずれの酵素においても、高温で反応を実施するより、それぞれの至適温度(ReverTra Ace®およびA社酵素:42℃、B社酵素: 55℃)で反応を行った方が良好な結果を示し、18S rRNAのような高次構造をとりやすい鋳型においても、高温での逆転写は必ずしも結果の改善には結びつかないことが示唆されました。これらの結果から、逆転写酵素の選択においては、反応温度の高さより、酵素に元来備わっている基本性能が重要であることが示唆されました。


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