「西海岸。の風に吹かれて」 第3回
第3回 分子「徘徊」学、科学者をいじめると・・・ <2007年5月>
みなさん、こんにちは。「西海岸。」です。現在、西海岸在住の某大学教員の仮の名前。といっても、アメリカではなく日本の西海岸ですが・・・ このシリーズの第1回では分子「姓名」学、第2回では分子「和独算」学をとりあげましたが、いかがでしたか? 2回続けて17という数字に関連する話題に触れましたので、十七といえば五七五の俳句、俳諧ときて徘徊と、こじつけもはなはだしく恐縮しますが、今回は、分子「徘徊」学を紹介してみましょう。ネタがなければ、歩き回って足で稼ぐ。しかし、そこは読者層を考慮して、生物学にもやや?関係のあるお話です。しばらくお付き合いを願います。
まずは、前回の補足として、日本語由来の遺伝子名の追加ですが、インターロイキン2受容体であるTac抗原が、京都大学医学部附属病院長である内山卓(Tac)教授の名前に由来することをK大学内徘徊中に見かけました。「この」サイトの中で「百万遍の粘り」の項を探してみてください。
ゴールデンウィーク前夜にはK市内に足を延ばし、「世界で一番売れている薬」という本を書いた山内喜美子さんと、その題材となった高脂血症の妙薬スタチンの発見者、遠藤章博士の著書「新薬スタチンの発見―コレステロールに挑む 」と 「自然からの贈りもの―史上最大の新薬誕生」の出版記念合同講演会に3冊とも持参し、両氏にサインしていただきました。遠藤章博士は、なにせ、ノーベル賞にもっとも近い日本人の一人と称されています。講演では、MedicalBioという雑誌の5月創刊号の掲載記事「バイオの巨人─ノーベル賞に迫った日本人科学者たち コンパクチンの発見者 遠藤章」をたどりながら科学者人生を振り返りましたが、謙虚な人柄が伺えました。ぜひ受賞してほしいものです。そうすれば、「西海岸。」のノーベル賞受賞者直筆サイン本コレクションも本場西海岸のStanford大学で直々に会えたArthur Kornberg、大江健三郎につぎ三人目となりますから。
さて、「徘徊」の話でしたね。最初は、俳人で生物学者を探してみようと思ったのです。短歌ならば歌人としても有名な細胞生物学者の京都大学の永田和宏教授がいますし、歌う生物学者なら東工大の本川達雄教授が元祖ですが、どうも俳人はいない。物理学者ならば、元東大総長で文部大臣だった有馬朗人氏や「科学者をいじめると、いろいろな発明や発見が生まれる」と言った寺田寅彦(大正十一年八月 渋柿)も俳人でしたが。生物学者探しはあきらめて、連休中、安倍首相の外遊中を幸い、官邸を徘徊していますと、教育再生会議にて、大学院進学者は同一大学同一分野からは3割程度に制限しようという議論の場に出くわしました。修士課程もX(3)年制にしようというその名も「プロジェクトX」。これも、もしかして発明発見を産めよ増やせのノーベル賞学者輩出のための科学者いじめの正当化?と思ってしまいました。
ところで、読者の中で大学院在学中あるいは出身の皆さんは、どうやって進学先を選びましたか? 私は同じ大学から、深くも考えずにそのままエスカレータ式に進学してしまいましたが、今から選ぼうという方は、志望先の学位論文審査のやりかたなどもできるだけ情報収集するとよいですよ。Websiteで公表している大学も多いですから。実は、先日Websiteを徘徊していたところ、10名中3名が脱落した40日に渡る過酷な陸上自衛隊のレンジャー訓練生を被験者とした疼痛閾値に関する大変興味深い某大学の博士論文の審査要旨を発見しました。「科学者を・いじめなくても・発見よ」(季語なし)と思ってもみたりして。
今回は、俳諧にこじつけた、ただWebsiteを歩き回っただけのかなり無理のある分子「徘徊」学でした。東海岸からも登場の噂が聞こえてきます。実に楽しみです。では、また次回。
(西海岸。)
2007年5月掲載
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