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「昼休みのベンチII」 第8回

『野外へ出よう!』(第8回)  <2009年8月>

  我が家の庭に、めっきり、メジロ、ヒヨドリのやってくる回数が減り、餌も残すようになりました。その代り、カラスがやって来て、その残り餌をついばむ姿が見られるようになりました。まさに、掃除役の出番のようです。今回の話しは、身近ですが、よく知らないカラスです。

 ♪カラス、なぜ泣くの、カラスは山にかわいい七つの子がいるからよ♪ で始まる童謡「七つの子」(作詞家 野口雨情1921(大正10年)「金の船」より)。 カラス(スズメ目カラス科)の話をするには、どうしても、この童謡から始めることになります。この「七つ」の解釈ですが、カラスは、通常、3月ごろ3から5個の卵を生みます。7個も卵を生むことはないようです。しかも、全部のヒナが育つのは、難しいと言われています。カラスの赤ちゃんが、七つ(匹)ということはないようです。卵の色は、下の写真のように、黒ではなく、薄青白色でまだら模様があります。大きさは、鶏卵とウズラ卵の中間程度でしょうか。

   ましてや、野鳥の平均寿命は、2年程度なので、七つ(歳)という解釈は、あり得ないようです。人工飼育場では、20歳ぐらい生きることはあるようですが、3月ごろ卵を産み、8月ごろには教育期間も過ぎ、一人前となりますので、七つ(歳)は、十分に大人になっています。雨情は明治41年3月に先妻(高塩ひろ)との間に長女をもうけましたが、しかし、わずか7日で亡くなってしまいました。♪シャボン玉とんだ、屋根までとんだ、・・・♪の詞は、この悲しい事実がきっかけとなった、とも言われております。「七つの子」も、人間の七歳くらいの幼子をイメージしたもので、生後1から3カ月のヒナを育てる時期、4月から6月ごろと思われます。

  ところで、山にねぐらをもつこの歌のカラスの種類は、山の奥深くに住む森林性のハシブトカラスと思われます。カラスというと日本ではクチバシの太いハシブトカラスと、クチバシの細いハシボソカラス(額が出ていない)が生息しており、森林性のハシブトカラスは、実は、東京、大阪などの都会をもねぐらにしており、ビル群のジャングルにも適応しているようです。大都会のジャングルが森林に似ているのでしょうか。それとも、森林には、果実が少なく、生ゴミが目当てでしょうか。他方、ハシボソカラスは、草原性で、農耕地に生息し、作物に被害を与えるようです。両者、きっちり、棲み分けをしており、いずれにしても、人間からすれば、黒のイメージと言い、スズメと比べ、好感度は、低いようです。日本サッカー協会の旗章、八咫烏(ヤタガラス)(昭和6年、日奈子実三氏デザイン)が救いですね。

  カラスの写真を撮るために、近くの畑地へ出かけました。こうして、出かけてみると、中々、見つからないですね。しかたなく、あぜ道を帰り始めたところ、カラスが、向こうから目の前に飛んできて、挨拶にやって来ました。そして、写真(左)のように電柱のテッペンに留まってくれました。やはり、農耕地に生息するハシボソカラスです。実は、どうも、出迎えや挨拶ではなく、後ろに写っている送電線の鉄塔に巣があるようで、彼の縄張りに入り込んでしまったようです。写真(右)の鉄塔のステップのところに二か所に巣があり、藁が垂れ下がっているのが見えますか。おそらく、巣には七つの子がいることでしょう。

  カラスと言えば、黒のイメージ(なにしろ、英語でもクロー!?)ですが、カラスの仲間には、白黒2色のコクマルガラス、暗褐色に白斑のホシガラス、全体的に明色のサバクガラス類などもおり、世界には、黒くないカラスも多いようです。

  カラスは、早起きで、日の出の40分前から巣でゴソゴソして、夜明けを待っています。一方、スズメは、日の出の5分前にならないと目を覚まさず、熟睡しているとのことです。カラスの社会でも「早起きは三文の得」のことわざは、通用しているのでしょうか。また、鳥は、一般的に、オスは、メスより朝早く起き、夕方は、遅くまで活動をするそうです。解釈は、自由ですが、本来、オスは、働き者なんですね。夕方、よく、集団で、ねぐらへ帰るところが見られますが、満員電車の中、残業で帰宅するサラリーマンとダブります。

  下の写真は、道で拾った羽根ですが、上はカラスの初列風切羽(翼の先端の前方のところ)です。初列風切羽は、風を真っ先に受ける部分で、左右対称ではなく、前方になるところが狭く、まさに、風を切るのでシャープになっています。後方の部分が広がっているのは、風の力を広い全面で、受け止め、その力を揚力に、あるいは、推進力に利用します。軸は、緩やかに曲線を描き、しなりがよく、中空構造で、軽量化されており、無駄がないですね。下は、スズメ?の小雨覆羽(翼の付け根のところ)と思います。翼の肩につながる部分で、撥水性と保温性に富む構造で、雨水から身体を守り、体温を維持し、体力の消耗を防ぎます。
 
  鳥類は全て鳥目(夜盲症?)と誤解されることが多いですが、ニワトリなどを除いて鳥類は夜間も視力を持つものが多く、フクロウやタカなど、夜に、野ネズミやヘビを捕まえる目利きも少なくありません。鳥目のトリは、ニワトリのことだったかもしれません。鳥目は、ヒトでは、ビタミンAの欠乏が原因ですが、ニワトリは、卵黄の中に多くのビタミンAを含んでいるのに、鳥目とは、妙な行き違いです。

参考図書
1. カラスはどれほど賢いか唐沢孝一 著 中公新書
2. カラスとかしこく付き合う法 杉田昭栄 著 草思社
3. カラスの早起き、スズメの寝坊 柴田敏隆 著 新潮選書
4. カラスはなぜ東京が好きなのか 松田道生 著 平凡社

***  お薦め書籍  ***

 『理工系離れ」が経済力を奪う
    今野 浩 著 日本経済新聞出版社

  戦後の日本経済の発展は、加工貿易から始まり、製造業の技術レベルを高度に発展させ、高機能材料、精密部品を装備した電化、電子機器や自動車産業の隆盛と続いてきた。この繁栄は、大学の理工学部の出身者の寄与が大きい。「国富の4分の3は、彼らが稼いできた」のフレーズは、その後の言葉が、隠されています。「なのにかかわらず、理工系技術者の評価は、低く(生涯収入に約5,000万円の差)、理系ばなれが続く、製造業衰退論は、間違っている、経済学部の金融工学で理系人材は使われてしまった」などが続くように思います。

  経済学部の金融工学が、現在の世界同時不況を招いた今、大学は、今、新たな社会的イノベーション、低炭素社会への技術革新(再生可能エネルギー、資源など)、人口減少社会の仕組みへの対応(家庭ロボットなど)を求められています。今後も、理工学部の出身者の果たす役割はこれまで以上に大きくなります。理工学部の出身者は、より社会(経済学部)への関わりを持ち、自らが、行動して、その評価、地位の向上に努める必要があります。文系官僚や文系経営者にとっては、理工学部の出身者の今の処遇のままが、居心地がいい。
 

(昼休みのベンチ)
2009年8月掲載

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