コーヒーブレイク
「昼休みのベンチII」 第7回
『野外へ出よう!』(第7回) <2009年4月>
春がそこまでやって来ました。この原稿が出るころには、春爛漫と思います。下の写真は、梅に鶯ではなく、早咲きの桜にメジロですが、春の訪れを楽しんでいるように花蜜を求めています。
1月15日午後、ニューヨーク市のハドソン川に不時着水したUSエアウェイズの飛行機事故は、鳥群が飛行機のエンジンに巻き込まれてトラブルを起こしたことが原因とのことでした。バードストライクと言いますが、機長以下スタッフの冷静沈着な行動と機転により全員無事救出されたことは、久々の心温まるニュースでした。予てから、どこの飛行場も、鳥対策に苦慮していましたが、その心配が現実となってしまいました。しかし、不思議に愛鳥団体から抗議の報道はなかったですね。
冬から春にかけては、絶好のバードウォッチングの季節です。それは、モズ、ツグミ、メジロ、ヒヨドリ、ウグイス、ムクドリなど種々の野鳥が姿を現す季節であり、木々には、葉っぱがなく、枝にその姿を見ることができるからです。また、餌となる果実や穀物が少なくなり、人里や庭へやってくる機会が増えるからです。探鳥写真家にポーズをとるカワセミは、いつも人気者です。(左写真)
ここで、バードウォッチングを取り上げるもう一つの理由があります。前回の野鳥の味覚、嗜好の話し(目立つ色にしている昆虫は、食べるとまずいという説)ですが、ちょっと、この事に、こだわりを持ってみたいと思い、野鳥の味覚の関係の本を調べて見ました。「庭にきた鳥」農山漁村文化協会の中で、佐藤信治氏は、アマチュアの方ですが、自分の庭に来る野鳥の味覚を庭に餌台を置き、そこに、牛脂や砂糖水を供し、やってくる野鳥の好みを調べています。その結果は、シジュウガラ、ウグイスは、より牛脂を好み、スズメは、砂糖水より牛脂を好み、メジロは、砂糖水を好むとのことでした。さらに、砂糖水の濃度を、2.5%、5%、10%の砂糖水を用意し、野鳥の好みを調べておられます。シジュウガラ、ウグイス、スズメは、5%、10%を好み、ヒヨドリ、メジロは、10%を好んだ。とあります。冬になると餌も少なく、気温も低いので、糖分や脂肪分の多い高カロリーの餌が好まれるようです。結構、昆虫類も食べているようですし、目立つ色にしている昆虫は、食べるとまずいという説は、擬態の理由として、もうひとつ、説得力がないように思いますね。
私も庭にどんな野鳥がくるか試してみることにしました。ちょっと、「野外へ出よう」の趣旨には、そぐわないですが。家の中からの野鳥の観察になります。餌にはミカンとリンゴ、砂糖水、そして瓶詰めのリンゴコンポート(甘みを抑えたジャム)を置きました。このリンゴコンポートは、効果抜群で、小鳥の大好物だったようです。
最初に、やってきたのは、下の写真のメジロ(スズメ目メジロ科)二羽です。なんとも、愛らしい小鳥です。文字通り、目の周辺が白く、また、全体がウグイス色をしていて、分かりやすい鳥ですね。最初、一羽がやってきて、いなくなったあと、やがて、二羽で、やってくるようになりました。番(つが)いでしょうか。ペアで行動することが多いとのことです。我が庭では、リンゴコンポート、ミカン、リンゴ、砂糖水、いずれも好んだようです。一般に、ミカン、リンゴ、虫やクモ、花の蜜や花粉を食べ、花の受粉を手助けしています。チーチーと高い声で鳴くので、やってきたことがすぐに分かります。昔から鳴き声を楽しむために飼育されてきましたが、現在、捕獲・売買が禁止されています。しかし、違法に捕獲・飼育されて、取引されているとのことです。鳥獣保護法違反での摘発も多くなってきました。
次の左下の写真は、ヒヨドリ(スズメ目ヒヨドリ科)です。頭のボサボサの毛(写真では頭を低くしているので分かりにくいです)と目の横の頬の茶色、腹の茶白の斑点模様、そして、少し長めのしっかりした尾が特徴です。全国どこの庭先にも見ることのできる鳥です。我が庭では、リンゴコンポート、リンゴを気に入ったようです。しかし、世界的には、日本列島周辺にしかいない珍しい鳥のようです。雑食性で、果実、木の実、花、小鳥のひな、トカゲなど何でも食べます。右の写真は、街中で見つけたムクドリ(スズメ目ムクドリ科)です。クチバシと足が橙色で分かります。頭は黒色で、頬に白斑があります。
不思議なことに見慣れているスズメがなぜか来ませんでした。ミカンとリンゴは、スズメの好物ではなかったか、観察しやすいように窓の近くに餌台を置いたから、警戒心の強いからかもしれません。ところで、国内のスズメの数が、現在、1800万羽で、この20年で80%も減少しているとの発表が最近ありました。(立教大学理学部三上修特別研究員) 確かに、巣作りに適した木造の家屋が、減り、隙間のないコンクリートや樹脂コーティングの外壁が多くなりました。昔は、雨戸の戸袋や庇の破れで、よく巣が見られたものです。
ぜひ、ご家族、お子さんと供に庭やベランダに来る野鳥の観察をされてはいかがですか。写真を撮るには、カーテンをした窓越しに、1,2時間は、声をひそめて、静かに、やってくるのを待っている辛抱も必要です。この辛抱することも、教育にいいのではないでしょうか。また、あまり継続的に多くの餌をやり続けるのは、野鳥の生態に影響を与えますので、控えてください。(野鳥協会のコメント)
参考図書
1. 「庭にきた鳥」 佐藤信治著 農山漁村文化協会
著者は、この本が出版される半年前に胃がんでご逝去されておられます。
2. 「スズメの少子化、カラスのいじめ」 安西英明 ソフトバンク新書
3. 「庭で楽しむ野鳥の本」 大橋弘一 山と渓谷社
4. 「日本の野鳥」 小宮輝之監修 学習研究社
*** お薦め書籍 ***
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「日本人は創造性に乏しい」という定説に、脳研究者のベストセラー作家が異論を唱えて、日本人にひらめきの導火線に火をつけようとしています。トヨタ自動車のQC(品質管理)サークルでの現場の改善活動を通じて、日本人がもっている特性を生かした創造力が世界一の自動車会社に押し上げたこと挙げています。日本人らしい集団でのパワー(ご近所さんの底力のような)が期待されています。
私は、最近、よく言われるようになったオープンイノベーションとこのQCサークルでの改善活動に共通点があるように思います。共に、一つの目的を達成するために、いろんな立場や所属を超えて、アイデアを出し合い、解決を図る点にあります。創造性は、才能ではなく、誰でも同じ程度あります。情報量*集中持続力*異分野柔軟性(好奇心)の賜物でしょうか。
(昼休みのベンチ)
2009年4月掲載
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