コーヒーブレイク
「アメリカ東海岸留学日記」 第34回
> 2013年 2月 28日 「冬の風物」
今年は日本の冬も厳しいようですが、アメリカ東海岸も連日の氷点下と積雪が続いています。ボストンは緯度的には北海道に近いので、氷点下は毎年のことです。ただ積雪は、海岸線では通常年に数度で積もっても数センチ程度ですが、今年は特別に寒波が襲って来ています。
2月初めには記録的なブリザード、Nemoがやってきました。Nemoは東海岸のニューイングランド地方を中心に、連日の風雪と、多いところでは二日間で1メートルの積雪をもたらしました。東海岸はアメリカ全土でも自然災害が少ない地域のため、人々は被災の経験がありません。そのため、いざ何かが来てもオロオロするか反対にワクワクするかになってしまいます。事態の予想が出来なかったのか、慣れない大雪の中でも外出した人々が多く、多数の車が高速道路の真ん中で立ち往生し、最終的には一時車を乗り捨てる騒ぎにもなりました。空港は木曜午後から土曜日夜まで3日間閉鎖し、メジャーな空港では何千本というフライトがキャンセルになりました。
私の大学ではちょうど来年度入学予定の大学院生が面接のために来校していたのですが、13人の学生は木曜日に到着したが最後、日曜まで街を出ることができず、ホテルに缶詰めとなってしまいました。実際には、大きな被害は無く、街が除雪車をフル稼働してくれたおかげで、週明けには道もすっかりきれいになりました。学校も再開されました。それにしても、昨年秋にはハリケーンで大騒ぎになるなど(これも実際には大きな被害はありませんでしたが)、このところ安全と言われるニューイングランドでも珍しく、季節ごとに自然災害がやってきます。変な話ですが、これら季節ごとのイベントのせいで、以前より季節の移り変わりを感じやすいです。
カリフォルニアなどの一年を通して暖かい地域から移って来た人々は、こんなに気候の厳しいところになぜ人間が住んでいるのかさえ理解できないと言います。私も最初はそう思いました。しかし、さすがに6年近くも住むと寒い冬にも慣れてきます。特にアメリカは格好がみなカジュアルなので、格好を気にせず頭の先から足の先まで好きな格好で防寒できるのは助かります。ただ、オシャレをするには残念ながら程遠い状態ですが。
一方で、格好を気にしているわけではないと思いますが、日本と一つ大きく違うのはアメリカではマスクをする人がいません。アメリカで‘マスク’というと、風よけのフェイスマスクなどを指すのが一般的です。たとえインフルエンザ(flu)が大流行しているとニュースでやっていても、マスクをしている人を街中で見ることはありません。不特定多数の人が集まる大学などの公共施設では代わりに、‘Cover your cough’のサインと共に建物の出入り口に殺菌スプレーやジェルのディスペンサーが置かれています。咳や接触を介した感染の広がりに対する警戒はあるようです。
ただ、マスクをするという文化自体が無いようで、薬局等でも日本で売っているようなハイテクなマスクの数々をみることはありません。冬にアメリカ人が日本を訪問すると、街中の人が皆マスクをしているのにびっくりするそうです。どうやら外国人には知らされていない何か深刻な感染症が流行っているのでは、と想像を働かせてしまうのだそうです。確かに格好に人一倍気を遣う日本人が、一方で、見た目を気にせずマスクをしていると深刻な感じがしてしまうのかもしれません。
私も最近ひどい風邪をひいてしまって咳が止まりませんでした。日本だったらマスクをして勤務したいところです。ただ、マスクをして登場するといよいよ危険な菌を持っていると思われかねません。仕方なくマスク無しで通勤したのですが、かといって咳を人前で頻繁にする訳にもいかず、研究室ではひたすら我慢するしかありませんでした。結局、それでも周りの人に迷惑がられてしまったので、咳が治まるまで一週間近く自宅勤務となってしまいました。研究室に来る必要がある場合も、人が少ない夕方以降に来るように気を使ったりもしました。このような感じで、風邪の感染に対してこちらの人々も日本と同じくらい敏感なように思います。ただマスクの無い文化だと、勤務時間が決まっている職種でも、咳が出ると毎回会社を休めたりするのか、ちょっと不思議です(仕事にならないので、きっと何か別の対策があるのだとは思いますが)。
スノーストームが去った後も、こちらでは未だ週に一度のペースで雪が降っています。3〜4月一杯、まだまだ寒い冬が続きそうです。元々日照時間が短く、その上に外での活動も制限されるので心が塞ぎがちになってしまいます。でも一方で、スキーなどのウインター•スポーツをするには素晴らしいコンディションと言えます。私も冬の寒さに負けないように、今年もボストンからさらに北に車で3時間、メイン州にあるスキーリゾートに行く予定です。せっかくの寒い冬なので、むしろその寒さを楽しめるように頑張りたいと思います。
(コンドン)
2013年3月掲載
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