コーヒーブレイク
「アメリカ東海岸留学日記」 第33回
> 2012年11月 30日 「カンザス•シティ訪問」
今年は11月末のサンクスギビング直後に初雪が降りました。アメリカでは
サンクスギビングはホリデーシーズンの始まりです。 この日を境に街では早々
とクリスマスの飾り付けが始まります。アメリカではこのサンクスギビングから
1月1日の元旦まで、長いホリデーが続きます。もちろん、実際に仕事を一月休む
わけではないですが、みな仕事のペースをスローダウンしてクリスマスの準備
を始めます。また気分的に休みが取りやすくなる時期でもあるので、有給を取って
旅行に行く人々もいます。
私も冬の旅行としてカンザス•シティに行って参りました。カンザス•シティは 地理的にアメリカ合衆国のまさに真ん中に位置し、Heart of Americaと呼ばれます。 アメリカ合衆国が出来る前、ヨーロッパからの入植者は東海岸に到着し、その後西へと移動していきました。 カンザス•シティはその西方開拓のための重要な中継地点として、古くから栄えた街の一つだそうです。街中にはホロ馬車のマークの看板がそこここに見られます。現在は観光用となっていますが、実際の馬車もまだ走っています。物資を西へ運ぶために昔は多くの荷馬車が通ったようで、アメリカの中では歴史を感じられます。
またオズの魔法使いの舞台となった場所でもあり、物語にも出てるトルネードが起こる場所として有名です。もちろん住んでいる人々からすれば、トルネードには一生会わない方が良いですが。山も海も森も無いのでどこまでもフラットな平原が広がり、建物が散在して建っているので視界が開けます。道は大きな碁盤の目で区切られており、東海岸とはストリートの1ブロックの大きさが異なります。東海岸では日本と同じく1ブロックを移動するのに30秒もかかりませんが、カンザス•シティでは数分以上かかります。そのため地図上は近くに見えても歩くには遠いことが多く、移動は車かバスが中心になります。
街は、ダウンタウンよりもプラザと呼ばれる屋外ショッピング•モール街が有名です 。意外にもアメリカで一番古いショッピング街だそうです。東海岸で想像する屋内ショッピング•モールとは異なり、オシャレなお店が立ち並ぶ一区画、例えばニューヨークの5番街やボストンのニューベリー•ストリート、または東京の銀座に似ています。サンクスギビングには点灯式を行い、毎年プラザの建物全てがライトアップされます。夜に訪れると一つ一つの建物がまるでアトラクションのようで、ディズニーランドに来たような錯覚を覚えます。人も多すぎないので、歩き回るだけでも楽しい場所です。プラザ内のお店はボストンや銀座と遜色ないほどオシャレです。高給ブランドの店から、チーズ専門店、チョコレート専門店などが並びます。グリーティング•カードで有名なHallmarkの本社があるため、Hallmark経営の大きな高級デパートもあります。
食べ物は、中西部らしくバーベキューが有名です。有名なBBQレストランがあるとのことで私も行ってみました。地元牛のリブ•ステーキを注文しましたが、これまでに食べたことが無いほど柔らかく、ステーキを食べに来ただけでも旅行の甲斐があると思いました。たいていの食事は日本の方が美味しいと思うのですが、ステーキに関しては値段と味を総合すると一般的にアメリカの方が優れているように思います。地ビールと地元コーヒーもあり、数は少ないとはいえ中々に美味しく、パッケージやラベルもオシャレなため、お土産として買って帰ることにしました。アメリカで食べ物をお土産にすることは滅多にないのですが、食べ物に関しても大きくカンザス•シティを見直しました。
街中には、フットボールスタジアムやコンサート会場、オペラ/バレーのシアター、美術館など、一通り文化的な建物も揃っています。また美術館や多くの公共設備が無料かそれに近いため、市民は安い生活費でも文化的なイベントを楽しむことができます。騒音も無く静かな街で、街中で会う人々は親しみやすく、家族で住むには良い街だと思いました。ただ、 ボストンやニューヨークのように大学や企業が無数にあるわけではありませんし、場所によっては治安も悪いところがあります。また近場の大都市シカゴまでは車で4−5時間かかり、周りに大きな街がないためカンザス•シティの中で生活が完結してしまいます。街中に日本人も少ないため、研究者として赴任した場合は、家族と過ごす以外は研究所に篭る生活になってしまうようです。学生やポスドクなど若い人にとっては外と交流する機会がなかなか無いため、精神的に厳しい部分もあるようです。
中西部の大学や研究所はこのような地理的不利をわかっており、それを補うために都会の大学に比べ良い研究環境や給料、福利厚生などのサービスを提供してくれる傾向にあります。家族がいる人の場合は大きな一軒家を簡単に購入できますし、子供の教育費も安く済みます。「住めば都」とは言いますが、中西部での優雅な生活に慣れてしまうとなかなかボストンのような混雑してお金のかかる場所には戻りたくなくなる人も多いようです。中西部は生活費が安く、家も研究室もスペースがあり、研究環境も良いので、落ち着いて仕事に集中したい人には都会よりもむしろ良い場所なのかもしれません。
(コンドン)
2012年12月掲載
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