コーヒーブレイク
「アメリカ東海岸留学日記」 第18回
> 2010年 2月 28日 「スキー事情」
こちらはまだまだ寒い日が続いていますが、日本はそろそろ春の気配が感じられる頃でしょうか。今冬のアメリカ東海岸は気候がおかしく、ボストンエリアではあまり雪が降らないのに、車で7−8時間ほど南に行ったワシントンD.C.やニューヨークではひどい積雪となっています。ワシントン周辺は特にひどく、友人の住む街では積雪が1メートルを超え、まるまる一週間学校も仕事も休みになってしまったそうです。例年ほとんど雪が降らない地域なので 街には除雪車が2台しかなく、人々は大混乱、文字通り街中が雪に埋もれて身動きできない状態となりました。まるで大災害が起こったかのように、連日ニュースでも取り上げられました。
一方、私の住む地域では例年大雪が降るので、雪が降りだしたと同時に除雪車がストリートを東西南北あらゆる方向へ走り回り出します。そのため、車が通れなくなることはほとんどありません。こちらでは道幅が広いこともあり、連日雪が降っても除雪は完璧です。例えば雪山にスキーに行き、その晩に吹雪いても、次の日には普通のタイヤでどこにでも行けるほど除雪が行き届いています。そのため、スタッドレスタイヤやチェーンを付けることは、こちらでは普通に暮らしている限りほとんどありません。普通の装備でスキー場に気軽に遊びに行けるのは非常に便利です。
そんなわけで先日、普通タイヤを履いた自分の車で初めて泊まりがけのスキー旅行に行ってきました。といっても向かったのは近場で、私の住む街から車で3時間ほど北に行ったところにある、ニューハンプシャー州のスキー場です。今回は旅行会社を通したディスカウントチケットを友人が手に入れたので、グループで行くことになりました。日本と比べると安いとは聞いていましたが、リフト券付きで一泊75ドルという破格の値段でした。滞在したホテルは年間を通してリゾートホテルとしても知られている高級ホテル(写真)です。内装はビクトリアン調の家具で統一され、温水プールやジャクジーも備えていて、このホテルに宿泊するだけでも価値がありました。
スキー場はホテルから車で5分ほどいったところにありました。2月末はすでにオフシーズンなのか非常に空いていました。リフトで待つことはほとんどなく、ゲレンデもコースによっては他に滑る人を見ることがありませんでした。プライベート・ゲレンデ状態です。雪質は、空気が乾燥しているので、日本に比べるとさらさらしているように感じます。ちょうど滞在中に雪が降ってくれたこともあり、翌日のゲレンデはふかふかの雪でした。こけても全く痛くないのは良いのですが、重心を前にかけすぎるとスキー板が雪に沈んで行ってしまうほどでした。
日本のゲレンデと比べると全体的に手入れが行き届いていないので、ワイルドな雪山を楽しめるという意味では新鮮です。上級者用の林間コースでは、木々や枝や岩をよけながらデコボコした斜面を下るという、ちょっとアスレチックな要素も入っていて、ただ滑り降りるのとはまた違った趣向が楽しめます。ただ、うっかり木にぶつかったりするともちろん大惨事ではありますが。他には、人工的に作ったジャンプ台やこぶのあるコースももちろんありました。基本的に、他のスキーヤーと出会うことは滅多に無いくらいに空いていたので、自分のペースで楽しむことができました。アメリカに来てから何度も思うことですが、スペースがあり、混んでいないというのは本当にすばらしいことだと思います。
この周辺のスキー場は、まだ明るい内、夕方4時には終了してしまいます。もったいない気もしますが、ぎりぎりまで滑って帰っても、家に夜7−8時くらいには着くことができるのは良い点です。翌日からの仕事にひびかないので助かります。ただ、運動不足の私はしっかり筋肉痛になってしまいました。そのため、この旅行のあと週の前半は今イチ仕事が捗りませんでしたが、他の人々は慣れたものです。このようなペースでほぼ毎週末、様々なスキー場へ行く人もいるようでした。
こんなにお得なスキー事情のアメリカ東海岸ですが、私のような基礎系の研究者はお金も時間も無いということで、意外にも何年も雪山に行っていないという人や、渡米後まだ一度も足を運んでいないという人も多いようです。またアメリカ人でも大学院生などは卒業するまでは行かないとストイックに心に誓っている人もいたりします。反対に、期限付きで滞在している企業の駐在の方やお医者さん、訪問研究者・学生は、この機会を逃すまいと毎週のようにアクティビティを楽しまれるようです。つい最近、後者の方々と知り合う機会がありましたが、スキーに留まらずロック・クライミングやヨガ、アイスホッケー、マラソンなど、様々なスポーツを楽しまれているようで、アクティビティの高さに驚きました。アメリカ生活も、当たり前のことかもしれませんが、職業や身分によって随分と違うものになるものだと思いました。彼らにとってこちらでの生活が現実ではないという、認識の違いによるものなのかもしれません。私の場合は、どうしても仕事や日々の生活を優先しがちです。でもたまには彼らを見習って、今このときのアメリカ生活をしっかり楽しむべきなのかもしれません。
(コンドン)
2010年3月掲載
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