コーヒーブレイク
「アメリカ東海岸留学日記」 第6回
> 2008年 3月 5日 「アメリカの大学院とメディカルスクール」
こんにちは、コンドンです。原稿を書いている現在は2月です。今月は
バレンタインデーがありました。私は知らなかったのですが、女性から男性にチョコー
レートを送るという風習は日本独特なんだそうですね。こちらでは専ら、男性が女性に
花やチョコレートを送るようです。女性はそのお返しにカードを送ったりもします。
また、小中学校では、クラスメイトにお互いカードを送り合うというイベントも公式
行事としてあるようで、日本と比べると結構大きなイベントとして扱われています。
アメリカでは、クリスマスが家族行事で、ニューイヤーが友達と過ごすイベントという
ことで、バレンタインデーは唯一の恋人達の日ということになるようです。この日は
花束の値段も2〜3倍に値上がります。私の周りでは高い花を買うより、男性があるい
はカップルで食事を作って過ごした人が多いようです。
さて、研究の世界では、大学院やメディカルスクールへの応募の時期となりま
す。進学を考えている学生達はインタビューへ飛び回り、大変忙しい時期となります。
アメリカの学部には日本のように医学部がありません。メディカルスクールへ進むた
めには、学部の卒業資格が必要となります。生物学専攻の学部生の場合、その興味
の対象から、卒業後は大学院かメディカルスクールへ進むかで悩むことが多いようで
す。大学で一通り生物学やラボでの研究を経験したあと、医者への道か研究者への
道かを選ぶわけです。ゆっくり人生の選択を行えるという意味では良いシステムだと
思います。しかし反対に言えば、それだけ学校へ通う期間が長くなり、社会に出るまで
お金も時間もかかることになります。
さて、医者になるためには、4年間のメディカルスクールを経た後、1年間のインターンを経験し、その後専門課程に進みます。専門課程(residency)はその分野により期間がことなり、例えば内科ならば3年、放射線医学ならばその2倍の6年間かかります。さらに、専門課程を無事終了しても、1−3年間のfellowshipに多くの人が応募し、さらなる専門性を高める場合が多いようです。専門課程は正確に言うと学校ではありません。給料をもらう事ができます。しかし、さまざまなセミナーや試験を経なければならないという意味では、半分学校のようなものととらえられているようです。つまり、独立した医者として働くころには30歳をゆうに超えていることも多々あります。
一方、大学院はというと、日本のように学部4年生の時にラボに配属
されるというシステムがないので、大学院の1年目をrotation studentとして、
2〜3ヶ月ごとに異なるラボでの研究を経験することになります。多くの人は
そこで行きたいラボを決定し、2年目から、いわゆる日本の大学院と同じ、一つ
のラボで自分の研究に勤しむことになります。またこちらでは、博士過程の
前座としての修士課程というのは一般的に設けられていません。大学院に
進む=博士過程の5年間以上を過ごす、ということになります。大変大きな
決断ですので、多くの人が、学部卒業後の1〜3年間をテクニシャンとしてどこ
かのラボで過ごし、ベンチワークが好きか、研究の世界でやって行けるかを
確認してから大学院にアプライすることが多いようです。そのため、アメリカの大学院生は年齢もまちまちになるわけです。
大学院への入学条件としてはペーパーテストの他に、これまでのラボでの研究経験なども問われます。用意周到な学生は、学部の2、3年生という早い時期から授業の傍ら、ラボで研究に取り組みます。またメディカルスクールへの入学審査にも有利に働くということで、クレディットをもらうためにラボで働きたいという学部生もいるようです。雇用者の教授側としては唯一の無料で働いてくれる人材です。特にPIが若く、経済状況が厳しいラボでは、多くの学部生を受け入れているのを見ることがあります。
(コンドン)
2008年3月掲載
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