コーヒーブレイク

「アメリカ東海岸留学日記」 第1回

> 2007年 4月 16日   「はじめまして!コンドンです」 

   はじめまして、「コンドンです」。名前の由来は、家のあるストリートの     
名前がコンドンだから。2007年の4月からアメリカの東海岸、ボストンから
南に1時間、NYから北に2、3時間ほど行ったところにある街でポスドクをして
います。まだ来て間もないので、これと言ってお店や観光についてガイドブック
以上に言えることはありません。そこで今回は、アメリカに来て仕事を始める
までの一連のセットアップで大変だったことやまわりの人々の第一印象など
について話したいと思います。これから留学される方の一助になれば幸い
です。

  私は4月1日付けで勤務を始めましたが、雇用契約、ビザの申請は半年前の
9月から始めました。それでも最終的にビザを取得できたのは3月でした。
テロ以降アメリカに関する全ての手続きが非常に厳しくなっているようです。ここで、私が渡米するまでにお世話になったサイト「研究留学ネット」http://www.kenkyuu.net/を紹介しておきます。研究留学を考えている方には有名なサイトで今更紹介の必要も無いかもしれませんが、ビザの取得の仕方や生活の基本情報が良くそろっています。

  さて、無事ビザを取得して入国したわけですが、初めにやったことは銀行口座を開設することです。ここでも外国人の私は一苦労。まだSocial Security Numberや大学のIDさえ取得していなかったことから、身分証明に手こずりました。結局提出したのはパスポートと日本から旅行保険代わりに持って行ったゴールドクレジットカード、そして大学のappointment letter(hire letterとも呼ばれ、一見ただの手紙ですが、雇用契約の詳細がのっており、これがオフィシャルな場でも意外と活躍するよう)です。特にゴールドカードの威力はカード社会のアメリカでは強力なのか、最初はいぶかしげだった銀行員も、これを見た瞬間に対応が丁寧になりました。さて、銀行口座は開けたものの、日本のようにその場でカードをもらえる訳ではなく、1、2週間後に別途郵送となります。チェックはその場でもらえるので、その間はチェックでしのぐか、日本からのクレジットカードが必要になります。
 

   次にSocial Security Number(SSN)ですが、ダウンタウンのfederal officeまで
赴いて、待たされること2時間、やっと面接にこぎ着けたかと思えば、雇用開始日
から数日しかたっていないので、移民局に確認をとらねばならず、番号を発行
するのに6−8週間かかると言われてしまいました。SSN自体は元来TAXの審査
に必要なだけのものですが、私の州では運転免許証の取得や携帯電話を購入
するのにも提示を求められます。免許証はしばらく国際免許証でしのぐにしても、
携帯電話は何週間もないようでは生きて行けないということで、私の場合は大学
のIDの提示とdeposit$500を支払って、購入しました。昔のようにパスポートの
提示だけで身分証明をすることは出来なくなっているというのが、携帯電話会社
のお兄さんの説明でした。

  さて次は、保険の申請です。ご存知の方も多いと思いますが、アメリカでは国の保険制度が発達していないので、大学が契約する民間保険会社に入る必要があります。そのため、元々の保険料は非常に高く(通常月々何百ドル)、大学や企業がサポートしない場合は、保険への加入が非常に難しくなります。アメリカでの自己破産の大きな理由の一つが医療費を払えないことだそうです。よく国民性を表していますよね。研究機関の場合、NIHなどの国立機関では歯科保険以外は全て機関持ち、私の勤める大学ではfacultyの場合は歯科保険を含めてもわずか月々数十ドルということで、ほとんど日本と変わらないサービスが受けられます。しかし、この条件は大学が異なればもちろん違いますが、同じ大学の同じポスドクでも雇用形態(ボスのグラントか大学の職員扱いか)などによって変わるようです。なんとも複雑。特に多くの機関では歯科保険はオプションの場合が多いので、その場合は自分で月々数百ドルを払うことになり、日本からの留学生では保険に入らず、帰国したときにまとめて歯医者に行く人も多く見られます(実際、航空券代を含めてもその方が安いのです)。さて、他にも細かい手続きはありましたが、一連の手続きに約1週間かかりました。その間、各事務手続きにキャンパス内に散在する各オフィスを自分で地図を見て訪ねるということで、事務へ行けば全部やってくれる日本の事務処理能力のすばらしさを懐かしく思い出す日々でした。
 

   ところで、東海岸(正確にはワシントン以北の東海岸)の人々に
関する第一印象ですが、最初に驚いたことは彼らが日本人並みに
勤勉であることです。多くの人は朝8時前後には大学に出勤し、夜の
6時あるいは人によっては夜間まで働きます。そして週末も土曜か
日曜日のどちらかはラボに出てくることが多いようですし、祝日も
休まないことが多いようです。もちろん、残業代などはでません。
また、彼らの多くは一般的に身内になるととても親切ですが外の者
には比較的冷たいという性質があるようです。この特徴も日本人に
非常に似ていると思います。私たち日本人が想像するオープンな
アメリカ人はどうも東海岸には当てはまらないようです。
気候が厳しいということもあるかもしれませんが、週末なども家族と
静かに過ごす人が多いようです。

 さらに、こちらでは一般的に大学院生以上の多くの人が家族を持っているようです(一部の大都市を除く)。こちらの大学院生は給与をもらえることもあり、また多くの人が一度社会に出たことがあるという事情からも年齢層は様々で、学生でも結婚していて子供を持つ人も非常に多いのです。帰る時間になると、ラボに子供を連れた彼/彼女のパートナーがやってくるという光景もよく見られます。家族や夫婦で研究留学される方には、日本よりも過ごしやすい環境だと思います。しかし、私のように単身渡米した者には、友達作りになかなか苦労しそうな予感です。

     大学の雰囲気は非常にアカデミックで、私が勝手に想像していたアメリカ
    の合理的で殺伐とした雰囲気は全くありません。もちろん大学にもよると思
    いますが、私の大学では、ラボの形態も教授に少数のポスドクと大学院生、
    学部生が付くという形態で、日本の大学と近いと言えると思います。アメリカ
    にもこういう大学があるのだなと来てみて今更ですが発見する思いです。留学
    の第一印象をまとめると、国による大きな文化の違いはあるものの、基本的
    に人はどこでも同じだということです。

  右上の写真は私の家のバルコニーからの風景です。真ん中の白い建物がステートハウスです。次回はアメリカの家事情について報告してみたいと思います。
 

(コンドン)
2007年5月掲載

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