(KOD FX) 実施例4 Long PCRにおけるPrimerの精製グレード及び鎖長の影響


                                東洋紡績㈱ 敦賀バイオ研究所 杉山明生

はじめに

200706121.jpg 『KOD FX』は、KOD DNA Polymeraseをベースに開発された高性能PCR試薬です。増幅効率、増幅成功率、および伸長性において高い性能を示すことが確認されています。よって、この酵素を使用することにより、今までどの酵素を用いても増幅が困難であったようなターゲットの増幅に成功する可能性が高まりました。例えば、GC richターゲットや全血を直接用いたPCRなどにおいても力を発揮することが確かめられています。
 KOD DNA Polymeraseは、優れた正確性に加えて、Pfu DNA Polymeraseの10倍以上のProcessivity(合成持続能力)を有し、long PCRができる素地をもともと備えていました。東洋紡では、このKODの特性を最大限に引き出すべく、改めて酵素、buffer、サイクル条件の検討を行い、優れた伸長性を引き出すことに成功しました。図1のように、KOD FXでは、ヒトゲノムDNAを鋳型としたlong PCRにおいて、24kb程度のターゲットまでの増幅が可能であることが確かめられています。
 今回は、このKOD FXの特長の一つである優れた伸長性を十分に引き出せるように、long PCRにおけるPrimerの精製グレード及び鎖長の影響について若干の検討を行いましたのでご紹介いたします。
 
 

 一口メモ
KOD FXで増幅されたDNA断片の末端は平滑化されており、通常のTAクローニングはできません。TAクローニングを行うには、専用の試薬「TArget Clone™ -Plus- (Code No.:TAK-201)」が必要となります。ちなみに、 KOD FXの正確性はTaq DNA polymeraseの約11倍程度です[KOD -Plus- (Code No.:KOD-201)の正確性はTaq DNA polymeraseの約80倍です]。



方法

 KOD FXを用いたPCRは、下記の反応組成にて、ヒトゲノムβ-globin領域の17.5kbをターゲットとして検討を行いました。また、PCRサイクルは、KOD FXの標準推奨条件である2ステップと、long PCR用に推奨しているステップダウンの2通りにて行いました。本検討にて使用したPrimerの配列等を、表1に記載しました。

 

(1)反応液組成
2x PCR buffer for KOD FX 25 μl
2mM dNTPs  10 μl
10pmoles /μl Primer F 1.5 μl
10pmoles /μl Primer R  1.5 μl
Human Genomic DNA (50ng/μl)  1 μl
KOD FX (1.0U/μl) 1 μl
Autoclaved, distilled water up to 50 μl


(2)サイクル条件

20070612condition_1.jpg
 

No. Primer名 Primer配列 PrimerSize
(mer)
GC% Tm
(℃)
精製グレード

A

hGB17.5F

TGCACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

35

49%

77.5

脱塩、カートリッジ、HPLC

B

hGB17.5R

ACATGATTAGCAAAAGGGCCTAGCTTGGACTCAGA

35

46%

76.9

脱塩、カートリッジ、HPLC

 

 

 

 

 

 

 

1

hGB17.5F40

GACTTTGCACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

40

48%

78.8

カートリッジ

2

hGB17.5F38

CTTTGCACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

38

47%

78.0

カートリッジ

3

hGB17.5F36

TTGCACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

36

47%

77.7

カートリッジ

4

hGB17.5F34

GCACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

34

50%

75.9

カートリッジ

5

hGB17.5F32

ACCTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

32

47%

72.3

カートリッジ

6

hGB17.5F30

CTGCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

30

47%

69.9

カートリッジ

7

hGB17.5F28

GCTCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

28

46%

67.4

カートリッジ

8

hGB17.5F26

TCTGTGATTATGACTATCCCACAGTC

26

42%

64.0

カートリッジ

9

hGB17.5F24

TGTGATTATGACTATCCCACAGTC

24

42%

61.6

カートリッジ

10

hGB17.5F22

TGATTATGACTATCCCACAGTC

22

41%

57.9

カートリッジ

11

hGB17.5F20

ATTATGACTATCCCACAGTC

20

40%

52.7

カートリッジ

12

hGB17.5F18

TATGACTATCCCACAGTC

18

44%

49.7

カートリッジ



結果及び考察 
  

 

(1)long PCRにおけるPrimer精製グレードの影響
200706122.jpg 脱塩、カートリッジ精製、及びHPLC精製の3通りの方法にて精製したPrimer(表1のA及びB)を用いてPCRを行い、Primerの精製グレードの違いによるPCRパフォーマンスを比較評価しました。その結果(図2)、脱塩グレードでは、2ステップ、ステップダウンのいずれのサイクル条件においても、目的バンド以外にスメアが出やすい傾向にあることが分かりました。一方、カートリッジ精製とHPLC精製グレードでは、両者で大きな差はなく、ステップダウンのサイクル条件では目的バンドのみの明瞭な増幅を得ることができました 。この結果から、長いターゲットを増幅する場合、カートリッジ精製以上のグレードのプライマーを用いた方がより良い結果が得られることが分かりました。

(2)long PCRにおけるPrimer長の影響
 次に、long PCRにおけるPrimer長の影響を見るため、40merから18merまで2base刻みで長さを変化させたPrimerを調製(表1のNo.1~12、精製は、いずれもカートリッジ精製グレード)し、PCRを行いました。その結果(図3)、2ステップのサイクル条件では、40~24merでターゲットの増幅が認められ、同時に出現したエキストラバンドはPrimer長が長い程少ない傾向にあることが分かりました。一方、ステップダウンのサイクル条件では、40~28merでターゲットの増幅が得られ、エキストラバンドはPrimer長に関わらず出現しませんでした。この結果から、long PCRでは、通常より長めにPrimerを設計し特異性を上げると共に、アニーリング(及び伸長反応)を比較的高い温度に設定することでより良い結果が得られることが分かりました。

200706123.jpg

まとめ

 KOD FXを用いるlong PCRのコツをまとめますと、(1)カートリッジもしくはHPLC精製グレードのプライマーを用いる、(2)プライマーは長めに設計し、アニーリング温度を高めに設定する、(3)必要に応じてステップダウンPCRを行う、ということになります。KOD FXは今回ご紹介したlong PCR以外にも幅広いPCRにおいて高いパフォーマンスを示すことが分かっています。別のPCR酵素で増幅に行き詰った時には、是非一度お試しください。


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