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「再四 西海岸。の風に吹かれて」 第32回

第32回 分子「赤雪」学  <2012年3月>

 みなさん、こんにちは。「西海岸。」です。西日本の西海岸地方に住む一地方大学教員です。

 春が近づき、大学でも別れと出会いの季節となりました。この時期の恒例行事に、定年退職教員の最終講義というものがあります。昨年は、ちょうど、3月11日金曜日午後に化学専攻の教授の最終講義が学内であり、専門分野違いで、お顔も知らない先生でしたが、拝聴していました。まさに、その時間帯に、あの東日本大震災が「発災」したのでした。数百km離れた当地でも震度3と報じられましたが、不思議なことに、その会場は地盤のせいか微動だにせず、被害状況を知らせるようにとの館内放送を聴いても誰も騒がなかったのですが、たった数10m離れた隣の建物に戻った際には、事務職の女性にかなり揺れて怖かったと言われて、不思議なこともあるものだと思ったのが、まざまざと思い出されます。そして、先日、たまたま、小松左京の「日本沈没」を原作としたコミックを読んでいましたら、まさに、同じような現象「都内のあるビルだけが、異常事象で沈んでしまう」場面があり、「事実は小説より奇なり」ならぬ、「小説が事実を先取りしている」とも思ってしまいます。そのコミックに、GPSデータでは、東北地方では冬季には積雪の重みで10mmほど沈下するという記述もあり、おおげさなと思いましたが、日本地震学会のニュースレターに、そんな記事も載ってますから、あながち、真っ赤な雪の嘘、というものでもなさそうです。

 ということで、今回は、積雪=セキセツ=赤雪の語呂あわせで、分子「赤雪」学です。
 こんなことを書きながら、昨日手元に届いたばかりの日本薬学会の機関誌「ファルマシア」の最新号Vol.48 No.3 2012 をぱらぱらとめくっていましたら、「逆転の発想」というコラムに東大名誉教授の荒田洋治先生が、金子みすヾの「積もった雪」という詩を引用していたのが目に止まりました。ここに、再引用してみましょう。


「積もった雪」

上の雪 さむかろな、つめたい月がさしてゐて。
下の雪 重かろな、何百人ものせてゐて。
中の雪 さみしかろな、空も地面(じべた)もみえないで。


  2月末には、関東地方の某大学の知人の定年退官記念講演も聞きに行きました。ちょうど、東京がたった1cmの「大」雪に見舞われた日で、東京郊外の大学構内も数cmの積雪で「大」学生は喜んで等身大の雪だるまつくりに興じていました。本人たちの自覚はなかったでしょうが、期せずして、「さみしそうな雪」を掘り起こしてやるやさしさの発露だったのかもしれません。そうこうして帰ってきた、雪国の我が家はすっかり雪が溶けていましたから、日本国としては、やや、国土基盤の傾斜が逆方向に変わるきざしなのかもと考えては大げさですか?

  この時期、大学入試シーズンでもあります。入試翌日の朝刊には、各紙ともに、入試問題の一部と解答例が載っています。活字が、まるで保険契約の約款のように虫眼鏡でも使わないと読めないように小さすぎるのですが、あれを読む人はどれくらいいるのでしょうか?入試問題を誰が作成するのかは、どの大学でも、もちろん極秘中の極秘ですが、地方大学では学部と科目によっては、担当できる人は限られてしまいますから、なんとなく、顔見知りの、あの先生だろうか、毎年、ご苦労様と思います。東京大学が、突然秋入学の方針を発表しましたが、留学生をたくさん呼び込みたいようです。そのためには、入試問題もすべて英語あるいは中国語!で行うくらいの改革が必要でしょう。そこまでしても「外国人」がどれくらい来てくれるか疑問です。ただ、マスコミ報道を見ててもあまり議論されていないようですが、少なくとも、親の仕事の都合で、特に日本人学校の少ない外国の高校で教育を受けてきた「帰国子女」の受け皿にはなりそうです。日本中で、「イノベーション」とカタカナ英語が氾濫してますが、Innovationには、それくらいの変革を伴う必要があります。

  変革というほどのことはないのですが、私の所属の小さな学内部門でも、4月を期して、組織名の変更、トップの交代などが起こります。これを機に辞める人もおり、後任の公募をしたのですが、30代半ばから、50代後半の人まで全国から応募して来ました。個人情報に関わるので、詳しくは述べられませんが、リストラに伴い失職した方もいれば、現職で昇任したばかりなのになぜ?というかたまで人生様々です。求人に応募する場合に、履歴書を書くのは基本と思いますが、要項に「自筆」と明記してあるのに、ワープロ打ちしてきた方が何人もいて、残念ながら書類審査で落ちてしまいます。不思議に思うのは、名前を聞けば、まず知らない人はいないような一流の会社での経歴を持ちつつ大学に職を求めようというのに、このように社会人としてどうかと思う書類を出す方がいるのです。とはいえ、当方の公募要項も日本語しか用意してない、グローバル展開には道遠しの組織でどちらもどちらかもしれません。

  最後に、とりとめないですが、最近のニュースで、気になることを少々。大震災後の政府の数ある対策会議の議事録が残されていなかったとか。ニュートリノが光速を超えたかもしれないという世紀の大発見実験を検証したら光ファイバーケーブルが緩んでいたので、再検証するとか。昔は、テレビが映らないと言って電器屋さんに故障をいってくる大半は、コンセントが抜けていたというのがオチだったそうですが。私の子供のころは、テレビの映りが悪いと、ドンと叩くと一時的でも直ることがありましたが、あれもおそらく、配線の一部が緩んでいたか、接点にホコリがたまっていたのが、ホコリが飛んで直ったのではないかと思います。お国の組織も誇りを捨ててでもホコリを叩き出さないといけないのでしょうか。ある大学の研究結果発表をもとに、ギャンブル好きの人の脳には神経伝達物質が多い、という見出しをつけた新聞と、ギャンブルに慎重な人は、ある神経伝達物質が少ないという見出しをつけた新聞があります。見出し担当のデスクがギャンブル好きか、ギャンブルで痛い目にあったことがあるのか、雪を白いのは当たり前とと見るか、夕焼け空のもとでは、赤い雪もありと見るか、でしょうか。

  タイトルだけ見て、もうちょっと生物学的なお話を期待した人には、申し訳ないですが、実際に、赤雪(あかゆき)というものがあることに、気づいていませんでした。

   黄砂や極限環境微生物に関係しているようですね。「西海岸。」の大学には、どちらも専門家がいますので、退職されるまでには、お話を伺っておこうと思います。では、みなさん、お元気で。

(西海岸。)
2012年3月掲載

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