コーヒーブレイク

「アメリカ東海岸留学日記」 第26回


 

 > 2011年 7月 12日  「モントリオール」

   先日、学会でカナダのモントリオールに行ってきました。フランス語が公用語のこの街では、ヨーロッパの雰囲気をそこここに感じることができます。街は近代的な建物が並ぶダウンタウンと、ビクトリアン調の古い建物の保存されたオールド•モントリオール、そして郊外に別れます。街なかは、地下鉄か自転車でどこにでも行けます。特に街中至る所にあるレンタル自転車のシステムは素晴らしく、好きな自転車置き場で自転車を借りて、使い終わったら近場の自転車置き場に返すことができるという大変合理的なシステムです 。そのため、車は必要じゃないばかりか、自転車を購入する必要もなく、観光客でさえも気軽に街中を自転車で回れるとあって、大変便利だと思いました。

   言語は、観光客の多いダウンタウンやオールド•モントリオールでは、英語とフランス語の両方の表記を見ることができますし、英語が通じないことは無いと言って良いでしょう。ダウンタウンでは店の種類や建物の感じもアメリカのダウンタウンに似ており、観光客でも買物に困ることはありませんが、反対に面白さが欠けると言えるかもしれません。モントリオールらしさを感じたければ少し郊外にいくと良いかもしれません。とたんに全てがフランス語になります。
 

   私は今回、学会前日に観光を兼ねてダウンタウンから地下鉄で北に10分の郊外、Mont Royalに一泊しました。この地域は学生街なのか、若くてオシャレで、スタイルの抜群なカナダ人の若者で溢れていました。そして、さすがフランス文化を受け継ぐだけあり、オシャレなカフェが街中に溢れます。24時間オープンのカフェもあり、バーよりポピュラーと言っていいでしょう。ただ、近所のカフェで一休み、と思って入ってみたところ、メニューがすべてフランス語表記のみだったことに驚きました。その上、店によってはウェイターとの会話も英語が通じないことがあり、注文にも困る始末です。何とか注文したものの、思っていた物と異なるものが来てしまうこともしばしばです。たとえば、普通のクレープを注文したつもりが、グラタン風(?)のクレープがきてしまったりしました。しかし、感動したのはどの料理を食べても美味しかったことです。そのため、結局注文し直す必要もなく、却って新しい料理に挑戦でき、良いサプライズとなりました。
 

    食べ物でもう一つ感動したのは、朝ご飯のベーグルです。セサミベーグルをトーストしたものにクリームチーズをのせただけなのですが、ベーグル自体の作り方に違いがあるのか、少しデニッシュにも近いリッチな質感が楽しめます。アメリカや日本のヘビーでドライなベーグルも悪くはないですが、モントリオールのベーグルはセサミから出るオイルで香ばしくジューシーで、でもデニッシュほど重くない絶妙なバランスです。上手く言葉で表現できないのが残念ですが、またモントリオールに行くことがあれば、ベーグルを食べに行きたいと思います。

   他にも、同じアメリカ大陸でもやはり違う国であることを感じたのは、人々の様子です。アメリカと比べてみな一般的にフレンドリーで親切だと感じました。入国審査官との会話も笑顔と共に「Welcome to Canada!」から始まりました。アメリカの入国審査ではまずあり得ません。アメリカに住み続けていると気づかないことですが、 アメリカでは多くの人々は自分の仕事を楽しまず、そのため最低限のサービスしか期待できません。また問題が起きても負けを認めると訴訟時に困ることから、とにかく謝らず、問題を解決するためには色々な場面でアグレッシブでなければなりません。人種の問題というより、日本人であってもアメリカで生きて行く限りはそうしなければならない社会システムになっていると言えます。こうしてたまに外に出てみると、攻撃的な社会にいることでちょっとずつ疲弊している自分に気づきます。どの社会も完璧ではないので、それぞれの国に利点と欠点はもちろんあると思います。アメリカは若くエネルギーのあるうちに住むには良い国だと思いますが、歳をとってから住むには厳しい国だと感じます。 学会中にカナダに移り住んだアメリカ人にも何人かお会いしましたが、平和で落ち着いた生活を送るには、カナダは素晴らしい場所とのことです 。
 

   さて、学会自体はダウンタウンの中心にあるMcGill Universityの校舎で行われました。McGill大学は、カナダで最も由緒ある大学の一つで、カナダのハーバードとも言われます。フランス語が一般的なモントリオールでも、この大学では英語が共用語です。建物の雰囲気も荘厳で、学生も世界中から来るので大変インターナショナルな環境です。研究のファンディング状況も良いようで、アメリカの一流ラボと遜色がないと言えます。カナダの良いところは、国自体としてはファンディングの総計はアメリカより小さくとも、ラボの数も少ないため、意外と研究費が取りやすいことです。また、カナダですとアメリカのNIHにも応募できることから、アメリカとカナダの両方のグラントに応募しているPIも多いようです。

  冬の寒さの問題を除けば、モントリオールは素晴らしい場所だと感じました。冬は、ボストンよりさらに寒さが厳しく、長く、外を歩くのも難しいとのことです。そのため、人々は地下鉄の駅と直結したショッピングモールなど、地下での活動を行うのが一般的なようです。長い冬の間、外で活動できない生活は、なかなか慣れるまで大変そうです。しかし、食事や人々の様子、街の美しさ、研究のレベルを総合すると、ラボを持って落ちついて住むのには魅力的な場所かもしれないと思いました。
 

(コンドン)
2011年7月掲載

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