コーヒーブレイク

「アメリカ東海岸留学日記」 第25回


 

> 2011年 5月 20日  「アメリカでの震災支援」 

  3月に未曾有の震災が東日本を襲ってから早数ヶ月が経ちます。未だ原発の問題に解決の糸口が見えず、日本の将来が心配な状況です。こちらアメリカでも、地震が起こってすぐに、大津波の映像と共にニュース速報が報道されました。それからまもなく、在米日本人を中心として様々な支援活動が始まりました。私の大学でも、学部生を中心にチャリティーコンサートが企画されました。地震が起こってから一週間という短い期間にも関わらず、動員数500人を超える大規模なイベントとなりました。日米の国籍を超えて多くの学生•教職員•一般市民のみなさんから寄付を集めることができ、日本赤十字に送金することができました。

  アメリカの大手新聞でも連日一面で報道が行われ、テレビでも繰り返し速報や現地リポートが報道されることになりました。大統領の声明により、アメリカ軍を中心とした日本救済政策も素早く活動が開始されました。地震直後のこの時期、アメリカに限らず世界中が日本に注目していたと言えます。私も、私自身はアメリカにいるにも関わらず、世界中の研究友達から家族の安否を心配するメールをいただきました。勤務する大学でも助けが必要ならば協力するとの通知を得て、多くの方に心配していただき、ありがたいことだと思いました。
 

   ただ、震災や原発による被害状況報告が日に日に悪い方向へ進展し日本政府への不信感が強まり、在日外国人への退去命令まででてしまったのは大変残念な事態だと思います。特に、原発は目に見えないために恐れる人が多く、私の周りでも今後しばらく日本へは行きたくないという人が多くなってしまいました。またアメリカのマスコミ報道は、本当にセンセーショナルです。外国の事件なので、日本の報道のようにパニックを避ける等の配慮をする必要がなかったことが大きな理由と言えます。さらに米軍からの詳細な情報が報道されたことも手伝い、日本人の私でも都内にいる家族と友人のことが心配でたまらなくなりました。ところが実際に都内の人々に連絡をとってみると、彼らの方が却って冷静でした。確かに日本側の報道を読むと、同じ事柄でもかなり控えめな書き方がされていることに気づきました。大手新聞紙でも国によりこれだけ報道内容が変わることに驚きました。日本のように言語の壁があると、良い意味でも悪い意味でも本当に情報操作が可能になってしまうのだと実感しました。
 

   アメリカ国内では、このようなマスコミによる過剰な報道により、ハワイやカリフォルニアまで放射性物質が飛んでくるのでは、と騒ぎだす人々も出てきてしまいました。そのためアメリカ政府は、安全を保証するための大統領声明を出さなければならなかったほどです。このような状況では、西日本は安全ですよ、といってもあえて来日したい人はしばらく出てこないのが普通と言えるでしょう。また、もっと問題なのは、地震直後にあれだけセンセーショナルな報道をしておいて、現在はほとんどニュースに取り上げることが無くなってしまったことです。日本からアメリカ市民が退去しアメリカ軍の役割も収束したことから、他人事になってしまった部分があるのかもしれません。マスコミの威力というのは本当にすごいもので、一面から退いた瞬間から人々の話題にも上らなくなってしまいました。私の周りには日本人がほとんどいないこともあり、すっかり過去の事件となってきています。
 

   一方で日本側の報道を読むと、原発の状況はますます深刻になるばかりです。原子力発電の問題は世界中が考えるべきもので、世界各国の報道機関にもしつこく報道をしてもらいたいものです。また、報道が行われなくなると支援の手が伸びなくなるのも心配です。日本人は助けられることに慣れていないのか、今回の国の声明やマスコミの報道をみても、海外からの支援を必要としているのか今イチわかりません。でも日に日に膨らむ被災関連の被害額の見積もりをみると、少しでも援助を得るのは悪いことでは無いように思います。

  また都内の電力不足も深刻なようで、大学や部署によっては、夏場は研究があまりできない可能性もあると聞いています。私の大学では教育機関として、寄付金の送金以外にも中長期的な支援として 被災学生や研究者の受け入れなども考案しています。しかし、遠方であることや言語の問題から、「申し出はありがたいが自分たちで乗り越えられる」という返答をいただくことが多いのが現状です。 特に事務方からは、震源に近い大学で被害が甚大だったにも関わらず「被害は軽微で復興に取りくんでいるので心配ない」という英語の回答をいただいたこともあり、同じ大学の教授陣から日本語でいただいた回答とのギャップに驚きました 。今回のような大きなイベントではもちろん、立場に寄って発言を変えねばならない部分もあるのだと思います。それでも、外に対して過度に心を閉ざしていると感じるのは私だけでしょうか。同じ日本人でも日本人の心を開かせるのは容易ではなく、国際交流の難しさを学びました。

  第2次世界大戦での核爆弾投下以来、核撲滅を唱えていた日本が再び核の被害に合うことになるとは何とも皮肉なものです。これを機会に、日本が核の使用についてさらに一層、世界でリーダーシップをとれるようになって欲しいですし、海外からの支援も国際交流の良い機会だと考えて、積極的に利用し復興の一助として欲しいと思います。
 

(コンドン)
2011年5月掲載

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