「昼休みのベンチII」 第27回

『野外へ出よう!』(第27回)  <2012年10月>

   今年の夏は、猛暑が続きましたね。毎年、温暖化が進むような印象があったのですが、気象庁の発表でも、「太平洋高気圧の勢力が日本の東海上で非常に強まり、北・東日本は厳しい残暑となりました。北日本の旬平均気温は、8月下旬から9月中旬までの3旬続けて、統計を開始した1961年以降で最も高くなりました。」とのことです。電力会社、自治体の呼びかけで、全国一斉に節電に努め、クーラーの温度設定を上げ、使用時間を短縮したことで、精神的な負担も「暑さ」が堪えたようです。ようやく、9月20日以降、涼しくなり、野外へ気持ちよく散歩ができる季節になりました。そこで、近くの里に「実りの秋」を探しに出かけることにしました。

   いつもの里山の散歩道も、しだいに、田んぼが埋め立てられていっています。近郊の農家は、後継ぎ問題と相続税の関係からか、貸しアパートに変わっていっております。こうして、行政の方針や市場経済の影響によって、確実に、風景が変わっていきます。

   稲の穂のたわみが、秋風に揺れている姿は、日本の豊かな、安心感のある風景ですね。田んぼからの稲穂の匂いは日本人の遺伝子にしっかりと組み込まれているようです。


   里山の斜面に栗の木が数本並んでいます。おそらく、商業用ではなく、自家消費向けでしょう。その横には、柿も、ミカンも実っていました。秋です。
 
   その一方では、左下の写真のように、虫に食われた葉っぱや絹糸を出した虫の巣も見つけました。ほとんどの昆虫は、口の絹糸腺から、絹を吐き、さなぎになる準備を行い、自分の生活圏を作り出します。カイコのようにきれいな繭玉を作り、丈夫で、温かい最高の居住空間を作るものもいますが、大抵は、周辺の葉を絹糸で手繰り寄せ、巣を作ります。中には、シロアリモドキのように、口からでなく前脚の先端から絹を出す虫もいるそうです。右の写真は、ガの幼虫でしょうか、葉を重ねて、しっかりとした巣を作っていました。幼虫たちにとって、葉は、食糧であり、住まいであり、寝室となり、生活のすべてです。生まれてすぐ目の前にある葉を食べ、スポンジ質のベットに寝ており、他にすることがない生活では、あのような不格好な姿になるはずです。
 
   同じように、葉の中で生活しているもっと小さな虫たち、潜葉虫の仕業をよく見ることができます。別名、絵描き虫と呼ばれ、葉に、曲線や幾何学模様を描き、その足跡を残します。潜葉虫とは、特定の昆虫を言うのではなく、主に、葉に植え付けられた卵が幼虫となり、葉の内部の柔らかな組織(海綿状組織など)を食べ、成長していく虫を総称しています。チョウ目、ハエ目、コウチュウ目、ハチ目などの幼虫で、天敵の攻撃から身を守る役目もあるとのことです。左下の写真の右上のセンリョウの葉には、文字を書いたように虫が這った跡があります。この足跡を残した虫は、成虫となり飛び去ったのでしょうか、それとも、他の虫や鳥などに食べられてしまったのでしょうか。こんな身近な所でも、植物と虫、天敵のとのかかわりが見られます。

   上の写真もツバキの葉にも潜葉虫の足跡が見られます。いままで、葉の病気は、ウイルスやカビの仕業と思っていたのですが、昆虫の仕業も意外と多いようです。生態系は微妙なバランスの上で成り立っています。人間の社会も同様ですが、潜葉虫のように自分だけシェルターに潜り込み、報酬を甘受している人はいませんか。

* * * *
「実りの秋」を満喫するには、やはり、地産地消の会席料理です。9月末の週末、一足早く、福岡の海辺に近い山里で、海の幸、山の幸たっぷりの秋の味覚を満喫してきました。



参考:
「生き物たちのつづれ織り」(第五巻)京都大学理学研究科 冊子
「絵かき虫の生物学」広渡 俊哉/編集 北隆館 2011.1

***  お薦め書籍  ***

 
 『金持ち父さんの21世紀のビジネス』

  ロバート・キヨサキ著 白根美保子訳 筑摩書房 2011.7

   「金持ち父さんシリーズでおなじみの著者の本です。21世紀のビジネスとは、何だろう、何を紹介しているのだろうかと興味を持って読みました。このシリーズは、タイトルがいつもうまいですね。要は、ネットワークマーケティングビジネスに基づいたビジネスアイデアを考えてくださいということでした。ネットワークマーケティングビジネスとは、既存の販売ルートや広告・宣伝を使うのでなく、口コミに相当するネットワーク、つまり、フェイスブックなどのソーシャルネットワークシステムを使い、さりげない友人からの紹介(手数料を払う)で、ビジネスを広げていくやり方です。何を売るか、何をサービスをするかは、ご自身の得意分野で発揮する必要があります。初期投資(リスク)を少なくして、誰でも始められるとのことです。ただ、実務書でしっかり勉強してから、検討する必要があります。従業員(E)、自営業者(S)からビジネスオーナー(B)、投資家(I)への頭の切り替えをまず行うことが最大のポイントのようです。

(昼休みのベンチ)
2012年10月掲載

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