「昼休みのベンチII」 第17回

『野外へ出よう!』(第17回)  <2011年2月>

   新春早々の我家の庭にジョウビタキ(スズメ目ツグミ科)がやってきた。今年は、何かいい年になりそうな気がします。(写真左下) この鳥のヒタキ(火焚き)の名の由来は、その胸毛の橙色かと思いましたが、鳴き声が「キッ、キッ、カッ、カッ」と、火打石の音が由来とのことです。列島に厳しい寒さが覆った冬の日本には、やはり、バードウォチングに出かけるのに限りますね。



 そして、同じスズメ目の寒空の枯れた枝にモズの姿(写真右上)は、絵になります。モズ(スズメ目モズ科モズ属Lanius bucephalus)は、百舌、百舌鳥とも書き、色々な鳥の鳴き声をすることから百の舌をもつ鳥とのことです。日本のモズはオオヨシキリやヒバリのさえずりを見事に真似て鳴くそうです。この特技は、オウムだけではなかったのですね。今回は、モズの話です。

   冬のモズの風景と言えば、宮本武蔵の「枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)」(和泉市久保惣記念美術館蔵)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「鵙」は、モズのことです。(写真右)晩年の孤高の武蔵の姿と獲物を狙うモズの鋭い視線のイメージがダブります。この鳥は、群れることのない、相手が強くても挑戦していく動物食の鳥、モズでなければなりません。

モズは大きな鳥に激しく攻撃する 遠藤幸子, 上田恵介 (立教大 理) 日本鳥学会大会講演要旨集 Page.127 (2010.09.01) 

   また、「もずが枯木で」の歌を口ずさむ人も居られるかもしれません。童謡作詞家サトウハチロウが、昭和10年に、満州に出兵した兄を想って書いた詩です。この詩に感動した茨城県の教諭、徳富繁が曲をつけ、全国に広まりました。元のタイトルは、「百舌よ泣くな」だったそうです。自分をモズに例えたのでしょうか。

百舌が枯木で 鳴いている
俺らは藁を 叩いてる
綿挽き車は おばあさん
コットン水車も 廻ってる

  サトウハチロウは、兄の出兵、弟を広島被爆で亡くして、戦争の悲惨さを味わいながらも、戦後の大ヒット「リンゴの唄」、「ちいさい秋みつけた」など、太平洋戦争と同時代を明るく生きた詩人です。つらいことが多かったから明るい詩を多く残したのかもしれません。

   この生命力の旺盛なモズも他の生物と同様に、環境の変化の影響を受けています。アカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)は,北海道において30年間に急激に減少しそうです。1992年から1996年までの5-7月の繁殖期に北海道で得られた合計41巣の繁殖の成績では、平均巣立ち成功率は53.7%であった。繁殖失敗の主要因は,卵もしくは雛の捕食だそうです。そして、よく言われるカッコウによる托卵は、ほとんど受け入れなかったとのことです北海道におけるアカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)の繁殖成績と雛の成長TAKAGI M (Osaka City Univ., Osaka, JPN) 山階鳥類研究所研究報告 Vol.34 No.1 Page.30-38 (2002.10.25)

   お互いに食う食われるの関係にある鳥類とヘビ類の組み合わせはフクロウとアオダイショウ、キジとアオダイショウ、モズとアオダイショウとの論文がありました。日本における鳥類と蛇類の捕食 被食関係田中幸治, 森哲 (京大 大学院理学研究科) 日本鳥学会誌 Vol.50 No.2 Page.91-105 (2001.05.31)


   モズの習性に捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む行為を行い、「モズのはやにえ」があります。(下写真左カエル、右カマキリ)秋に最も頻繁に行われることから、冬の食料不足に備え、貯蔵することが目的とも考えられますが、大抵、そのまま放置することが多いようです。また、モズの体が小さいために、一度獲物を固定した上で引きちぎって食べている最中に、敵が近づいてきて、獲物をそのままにして逃げてしまったという説もあります。

   冬の食糧確保という点から、本能的に積雪量を感知し、はやにえを雪に隠れない位置に造る、つまり、「はやにえ」の高さが高いほどその冬の積雪が多いと言う事実を,1989年から1993年までのデ-タを示して紹介した論文もありました。 「「はやにえ」による生活の知恵」鍛冶秀雄 (石川県教育委) 生物の科学 遺伝 Vol.50 No.4 Page.104-106 (1996.04) 

  ところで、大阪府の鳥は、モズだそうです。日本書紀の中に「仁徳六十七年の冬十月五日、河内石津原に行幸し、陵地を定められ、十八日に初めて陵を築いた。この日、鹿が野原から突然飛び出して役民の中で死んだ。その時、鹿の耳から百舌鳥が飛び出したので鹿の耳を調べると耳の中は百舌鳥に咋い裂かれていた。それで、この場所を百舌鳥耳原と呼ばれるようになった」そうです。そう言えば、仁徳陵など百基以上築かれた百舌鳥古墳群のすぐ近くにJR阪和線に百舌鳥駅もあります。大阪府をはじめ、堺市、羽曳野市、藤井寺市では、共同で、この古墳群を世界遺産登録の運動を推進しています。
 
   さて、大阪府下、今年の4月統一地方選挙から来年2月の大阪府知事選まで、百家争鳴が続くようです。立候補者のみなさん、くれぐれも、百舌鳥ならぬ二枚舌の多用はお慎み下さい。

 引用:「あくあぴあ芥川」の展示から「モズ」および「はやにえ」を撮影させて頂きました。http://www.city.takatsuki.osaka.jp/rekishi_kanko/kanko/aquapia.html

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(昼休みのベンチ)
2011年2月掲載

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