「再五 西海岸。の風に吹かれて」 第40回

第40回 分子「諸名」学  <2013年12月>

   みなさん、こんにちは。「西海岸。」です。西日本の西海岸地方に住む一地方大学教員です。

  諸般の事情で、このエッセイも数か月の間が空きまして、夏を飛び越して、あっという間に冬に突入してしまいました。今回のエッセイのタイトルは、分子「諸名」学としました。書名あるいは署名の誤変換ではなく、「諸」々の人々に、著書に署「名」をいただく「西海岸。」の趣味の行為を簡略化しておりまして、この季節のトピックスの流行語大賞をまったく狙ってはおりません。これまでにも、ノーベル賞受賞者の故アーサー・コーンバーグ博士には米国と日本で直々に会って2回もサインをもらった話題を紹介しましたし、大江健三郎氏や、将来のノーベル賞候補者からも著書サインをいただいております。前回の第39回では、このエッセイコーナーで5月まで執筆されておられた「昼休み」さんの著書にサインをいただいたことに触れました。その後、7月に横浜国大で、ある会合があった際に分科会でご一緒した田村元紀先生に「企業研究資金の獲得法」というかなり直截なタイトルの著書のサインをいただきました。3年ほどの前の出版ですが、かなりの大学図書館で借りることができるようで、どの大学も外部研究資金の獲得に邁進している一端がうかがえます。

  11月にはいってからは、ゲノムプロジェクト研究の大家であられる松原謙一先生に、先生の作られたベンチャー企業の鶴見のオフィスでお話しできる機会があったので、本来ならば、先生が31年前に書かれた最初の著書である「プラスミド」 を持参したかったのですが、我が書棚には見当たらず、代わりに、23年前に書かれた「「ヒト」の分子生物学を提唱する」を持参しました。先生は、一見して、「ほう、ぼくはこんな本を書きましたっけ?」とおっしゃってましたが、中村桂子さんとの対談を書物化したものですから、ご自身で書いた意識はなかったのでしょう。私も正直なところ、この本を買った覚えがあっても、ちゃんと読んだ覚えがなかったので、礼儀上、行きの新幹線の中で通読して、感銘を受けた「あるキーワード」にしっかり傍線を引いてアピールしてきました。実は、このキーワードに関わるあるお願いがあって、松原先生をお訪ねしたのですから、私にとっても、この本の中の23年前の先生と今日の先生のお二人に数時間の時をはさんで同時にお会いしたような不思議な感覚がありました。1934年のお生まれですから、かなりのご高齢ですが、まだまだお元気で、訪ねた前日には日本海側某都市に日帰りだったそうで、その前々日も某大学で1時間半立ったままで講演されていたとの知人から情報を得ています。私どもの大学にも、今月、お呼びしていますので、もう一度、「プラスミド」のありかを探してみます。

   これで、ノスタルジー感覚に火が付いたというわけでもないですが、前々回にも触れた、20数年前にパソコン通信を基盤として立ち上げていた、今風に言えばバイオ研究者版実名SNS活動で知り合った仲間のうち7名が、この20年間、LSDという略称だけ聞くとあぶなげな雰囲気のライフサイエンス辞書(Life Science Dictionary) データベース活動を連綿と続けており、今回は、「西海岸」の近くの某大学で年に一度の研究会を開くことを聞きつけて、このメンバー7名全員の16年前!の共著である、医学・生物学のためのライフサイエンス辞書3.1スーパーブック : かな漢字変換・英和/和英・用例・スペル電子辞書(羊土社, 1997.8)などを持参して、全員のサインを獲得するとともに温泉宿で旧交を温めることができました。ちなみに、この本の中には、「西海岸。」の本名もちらりと書かれている箇所があるので、そこは、自分のサインをいれました。今年の年頭の分子「古寄」学では、古書を大量に寄付する話をしたところではありますが、これらの本は手元に置いておいて正解でした。

  さて、「西海岸。」は暇にまかせて、サイン集めにかまけているようにしか見えませんが、確かに今年は夏は知床半島に、初冬に鹿児島の桜島などにと渡り鳥のように初めての土地を訪ねてきました。桜島は事前にライブカメラで見ると、とても立ち寄るのが怖そうですし、たまたま、学会もどき?の出張で訪れた11月初旬も噴煙を上げていましたが、泊まったホテルの眼前の港から、フェリーで150円で行けるという料金の安さに惹かれて出張後の半日を利用して遊歩道など観光してきました。やはり現場は見てみるものですね。

   さて、残りのスペースもわずかですが、前回のエッセイで、センターオブイノベーションというのが、一部の?国内大学では話題になっていると書きました。そんなことをひとごとのごとく書いた舌(筆?)の根の乾かないうちに「西海岸。」自身も、その申請支援作業の末端に内側からどっぷりと関与する事態になっておりました。結果として採択校のはじっこにひっかかっているので、今後とも、なんらかのかかわりがあると思いますが、多くの大学関係者と多くの企業が複雑に絡み合って運営しないといけない事業ですので、このかるーいエッセイで風に吹かれてしまうようでは関係者のみなさまに微細にでも?影響が出てもいけないので、内部事情にはあまり触れませんが、20年後に、この事業で知り合った方々が、どういう運命をたどっておられるか夢想しております。みなさんも、どうかお元気で。

(西海岸。)
2013年12月掲載

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