「続々:西海岸。の風に吹かれて」 第18回

第18回 分子「投光」学  <2009年11月>

  みなさん、こんにちは。「西海岸。」です。西海岸というとアメリカと思いがちですが、陽光輝くカリフォルニアにて一時過ごしたのは、はるか昔の事で、現在は日本の西海岸在住の某大学教員のペンネームです・・・。

   11月になりましたが、1日は44年ぶりに東京は夏日、旭川では早くも大雪だそうで、やはり温暖化の異常気象の影響なのでしょうか?

   さて、分子「**」学のシリーズで続けてきたエッセイですが、今回は分子「投光」学です。バイオからみの話題を続けてきていますから、光なら、分子イメージングの話題だろうかと想像された方ごめんなさい。その分野は、「西海岸。」にはまるで縁のないもので。

   先日開かれた韓国の某大学との研究交流発表会を覗いてきました。座長は本学の若手教員が担当し、両国からの発表者の講演、質疑ともに公用語は英語での進行です。ただし、トリを務めた韓国側からの演者が、20年前に日本の大学に留学し博士号を取られた親日家教授で、気をきかせてくださったのか、流暢な日本語で講演されました。座長が、一瞬英語で司会すべきか日本語で話してもいいのか困惑されていましたが、それはともかく、講演内容は、不老長寿の薬の話をするというイントロで始まったので、最初は、眉につばを塗りながら聞いていました。先生の説では、動物実験で学問的に実証されている寿命延長はカロリー制限による少食が一番で、摂食量を4割減らせば寿命が4割延びて、3割減らせば3割延びる、しかし、先生の研究中の生薬由来成分では、せいぜい、1割しか延びないとのことで、まずは謙虚な発表だったというべきでしょうか。

   その次の日は、別のセミナーでの講演会。長年のライバル教授との学説の争いで、自説が勝ったとの主張。ただし、門外漢が聞いていても、どうしてその結論になったのか、よくわからなかったが、隣の先生も同じ疑問をもったらしく質問したら、お答えは、先生の説を投稿したら、その査読者が、当のライバル学者であったにも関わらず、通してくれたから決着が着いたのだとのお答え。今度、相手の先生の投稿論文の査読が回ってきたら、客観的に対応できるだろうかと心配。これも、お互いに、「投稿」ならぬ、「投光」しあって、「脚光」を浴びることができれば、それはそれでご同慶の至り。

    そういう高度な議論はさておき、10月のある日の全国紙に、こども向けの科学解説記事欄と、別のページの健康欄の医学記事に同様の話題が載っていたのですが、相互に矛盾する内容があり、科学記事欄には質問用のメールアドレスがあったので、できれば翌週の記事で補足説明してほしいという質問を送ってみました。もとより直接の返事までは期待していなかったのですが、1週間ほどたってから、担当の科学担当記者より、記事がまぎらわしくてすみませんという弁明の返事が来ましたが、記事自体を直す気はなさそうです。実は、その1週間ほど前にも、似たようなことがあり、その場合は、やはり科学関連記事と、同じ新聞に載った科学機器広告の売り文句(科学的内容を主張)に矛盾があり、記事内容が正確ならば、広告主は、虚偽に近い形で商売をしていることになるので、新聞の信用性にも関わりますよと調査を求めましたが、こちらには返事がありませんし、同じ広告は、その後も継続して掲載されていますから、新聞社としては、取り上げるに足らずと判断されたのでしょう。それとも、単なるクレーマーと思われたのでしょうか。

    前者の質問に、なぜ、わざわざ新聞記者が返事をくれたのか、勝手に想像すると、今年は、残念ながら日本人からノーベル賞受賞者が出なくて、少しばかり時間の余裕があったのかもしれませんね。別の大学に勤めていた頃、ある学会の予稿集を見た新聞記者から電話がかかってきて、記事にする予備調査をしているので、事前に電話取材をしたいとのことで、こちらは、不正確な記事を書かれても困るので、取材なら学会会場に来てほしいということと、記事内容の事前確認をさせてほしいと要求したことがありましたが、対象発表が多すぎて、いちいち直接の取材は出来ない、記事内容も見せることが出来ないということで、お断りしたことがあります。先ほどの記事も、どちらも大学教授が取材協力したと書いてありましたから、内容を事前確認してもらったらよかったのにねと思います。

   本来、このエッセイの原稿の締め切りは隔月末なのですが、担当者にご迷惑をおかけして締め切りを過ぎた今日11月1日から、昨年のノーベル物理学賞受賞者益川敏英博士の「私の履歴書」の連載が日本経済新聞で始まりました。第一回は「へそ曲がり人生」だそうで、筆者が書くのが慣例の「題字」も悪筆だからと断っておられる。悪筆とへそ曲がりだけは似ている私ですから、親近感を覚えます。寒くなって朝起きるのが億劫になってきましたが、今月だけは一ヶ月朝刊を開くのが楽しみです。少し早起きしてみましょう。

   私の職場でも親族でも幸い、まだ新型インフルエンザの感染者は出ていませんが、皆さんはいかがでしょうか。どうかご自愛ください。また、お会いしましょう。

(西海岸。)
2009年11月掲載

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