「アメリカ東海岸留学日記」 第23回


 

> 2011年 1月 3日  「コロラドでのクリスマス」 

   今年のクリスマスはスキーで有名なコロラドに遊びに行ってきました。昨年、仲の良い友人がコロラドの州都デンバーに引っ越したので、スキーがてら友人宅で休暇をすごすことにしました。

   コロラドはカリフォルニア州から東の内陸に向かってネバダ、ウタを超えて行ったところにあり、カナダからメキシコ近くまで北アメリカを縦断してそびえるロッキー山脈の南方に位置します。デンバーの街自体の標高も高く、人によっては酸素欠乏のために気分の悪くなる人もいるようです。デンバーの街に降り立ってまず感じたのは、見る限り、山、山、山、だということです。日本のような島国では広大な海はあっても、山といえば小さな山が一つ二つあるという具合だと思います。でもここでは日常生活に広大な山脈が背景となって広がります。島国育ちの私には、壮観であるとともに不思議な風景に思えました。
 

  コロラドは内陸に位置するため、空気はかなり乾燥しています。日差しも強く、冬でもサングラスがかかせません。気温は、寒暖差が東海岸よりさらに激しく、日中は東海岸の冬より暖かく感じますが、夜になると反対にぐっと冷え込みます。空気が澄んでいるのか、天気が良いとどこまでも透明な青空が広がり、広大な山脈とのコントラストはすばらしく、いつまでも眺めていたいと思ってしまいます。

   町並みは東海岸と違い歴史が浅いため、ヨーロッパ調の建物はあまり有りません。カリフォルニアと同様、モダンなスタイルで広い土地を生かして一つ一つの建物が大きく横に広がります。店も道幅も大きいのは良いのですが、大きすぎて日本や東海岸のように、ちょっと歩いてスーパーまで、というわけにはいかないのが難点です。買物をするだけでも一つ一つの店を車で回るので、丸一日かかってしまいます。店の種類もチェーン店が多く、歴史ある個人経営の店はなかなか無いようです。東海岸から引っ越してきた友人も、良いレストランやお店を見つけるのが一番苦労していると言っていました。
 

   こちらのクリスマスは日本の正月にあたるので、クリスマス•イブは、近しい人々で集まってディナーを食べ、夜にはクリスマスプレゼントをみなで開けました。日本と違って、こちらでは小さなプレゼントから大きなプレゼントまでとにかくたくさんのプレゼントを家族や友人同士で送り合うようです。小さいものでいうと、リップクリームや靴下から、大きい物はパソコンまでと様々です。そしてクリスマスの日まで、きれいにラッピングしたたくさんのプレゼントをクリスマスツリーの下に置いておき、一気に開けるのを楽しみに待ちます。

   翌日は、朝早起きをしてスキーに出かけました。コロラドのような世界的なリゾートスキー場は、ホリデーシーズンはものすごく混みます。そこで、友人宅から1時間で行ける近場のスキー場に行くことにしました。近場のローカルなスキー場といっても、パウダー•スノーには変わりはありません。また、雪山の規模もリゾートほど大きくはありませんが、東海岸の小さな山の比ではありません。このスキー場は併設する宿泊施設が無いということで、車や泊まる家のある地元の人々しかほとんど来ないそうです。私たちの期待通り、クリスマス当日はほとんど人がいなく、広大な山脈を背景にスキーを存分に楽しむことができました。
 

   コロラドのスキーヤーについて気づいたことは、彼らはどこでも滑ってしまうことです。滑るトレイルはもちろんスキー場が指定しているのですが、そんなものは気にせず、木々の間も、岩のあるところも、構わずどこでも滑ってしまいます。そのため、どこまでも広がる雪の山脈であっても、スキーの滑走跡を見ないところがありません。どう見ても近くにリフトがない、完全に未開発の山肌にも滑走跡が見えるので不思議です。人間はこうしてどこにでも侵略していくのだろうか…、などと、こんなところで妙に人間の開拓力の強さを目の当たりにする気分でした。面白いような、でも少し恐ろしいような光景です。
 

   私のコロラド滞在中は、コートがいらないくらい天気が良く快晴の日々が続き、完璧なホリデーでした。一方、東海岸は記録的なスノー•ストームに見舞われ、交通機関ばかりか高速道路も閉じる始末で、みな家に篭って動けなくなっていたそうです。クリスマスは一年で最も人々が帰省などで移動するシーズンです。元々飛行機も電車も予約が一杯だったところに、ストームで全交通機関がキャンセルになり、東海岸一帯が文字通りのパニックになってしまいました。私のフライトもデンバーからワシントンまでは大丈夫だったのですが、そのあとのボストン方面までの乗り継ぎ便が全てキャンセルになってしまいました。次のフライトを確保するために航空会社に問い合わせても、永遠に話し中か仕舞いには回線を切られてしまう始末です。そのため、友人に頼んで、片道1時間かかる空港まで連れていってもらい、直接カウンターで次の便を予約しなければなりませんでした。
 

  私は正規の航空券をもっていたので一日遅れのフライトがとれたのですが 、格安航空券で予約をした人は、次の便を予約することもままなりません。やっととれたと思ったら、一週間後のフライトになってしまって、レンタカーで帰る覚悟をした人もいたそうです。ニュースでは60〜90cmの積雪ということで、車を空港に置いて来た私は家まで帰れるかも不安でした。しかし着いてみれば、道路は雪かきが完全に済んでおり、しかも快晴で気温が高いので雪はすでに溶け始めていました。

  雪のせいで帰ってくるのに苦労したので、せめてこの雪を楽しもうと思ってクロスカントリー•スキーやスノーシューイングなどのアクティビティを計画していたのですが、本当に幻のようにあっという間に消えてしまいました。あれだけ大騒ぎしたのに…、と変な話ですが、がっかりしてしまいます。大騒ぎのクリスマスとはうって変わって、お正月は快晴で暖かい素晴らしい小春日和となりました。このまま暖かくなってくれれば…、と思ってしまいますが、冬はまだまだこれからが本番です。スノーストームもこれから何度もやってくるでしょう。そして、そのたびに交通機関が止まるのが東海岸です。冬に東海岸に旅をされる方は、ぜひ天気予報にご注意ください。

   では、今年もみなさまにとって素晴らしい一年となりますように。
 

(コンドン)
2011年1月掲載

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