「アメリカ東海岸留学日記」 第10回


 

> 2008年 11月 4日  「大統領選挙」

  この原稿を11月4日、アメリカ大統領選挙の日に書い
ています。アメリカ国民にとっては、ついにこの日がやって
きた、という感覚です。今回は両党とも有力な候補者を揃え
ており、アメリカ国内では大変大きなイベントとなっています。
文字通り、国中の人々が注目しています。街中では、選挙を
祝うイベントがそこここで開かれています。

  大統領選挙は、約1年前に各党候補選出から始まりまし
た。つまりマスコミもそれを見る人々も、年中この種の話題
で賑わっていたと言えます。ラボ内でも、「今日は○○の
スピーチがあるから、家に帰ってテレビを見ねば」という台詞をよく聞きました。日本と比べると、スピーチ内容がはっきり競争相手を批難していたり、ほぼ喧嘩に近いやりとりだったりすることも頻繁です。またスキャンダルも公然と取り上げます。そのため、スピーチはゴシップも含んだドラマ仕立ての展開となります。見ている側もハラハラドキドキと、まるで良く出来たテレビ番組を見ているように楽しむことができるわけです。

 

    選挙数ヶ月前からは、道端にOBAMAかMcCain
  のプラカードを庭先に立てている家々が見かけられるようにな
  りました。また、キャンパス近くでは、ブッシュ大統領の最後の
  日までのカウントダウンをしているカフェもありました。アメリカ
  大統領の任期は4年間ですが、現職大統領は次の選挙に勝
  てば一度だけ任期を延長することができます。つまり最長8年
  間、大統領を勤められるのです。ただ、その後はその職から
  退かねばなりません。ブッシュ大統領は今年が8年目であり、
  来年1月からは確実に大統領でなくなります。このような職を退くことが決まっている大統領を“lame-duck president”、と中傷を込めて呼ぶそうです。lameとは貧弱なとか、時代遅れなどの意味があります。有権者は常に新しい大統領が待ち遠しいということでしょう。そして古い大統領にこのような抽象的な呼び名を付けたり、カフェでカウントダウンしてしまうところは、さすが自由の国アメリカ、というところでしょうか。
 

  さて今回の選挙の話に戻りますが、前日の11月3日には、みなそわそわと落ち着きがなくなり始めました。そして4日当日には、街中が異様な緊張と興奮に包まれます。投票は、最寄りの教会や公共施設に簡易投票所が設けられ、そこで行うことができます。また学内では、大学校舎の一部に投票所が設けられ、学生達はそこで投票することも出来ます(写真)。投票すると“I voted”というシールがもらえます(写真)。それを付けて、大手コーヒーショップやアイスクリームショップに行くと、無料で商品をもらう事ができます。このようなサービスはいつも行われるわけではないそうで、今回の選挙がいかに特別で重要かを物語っています。
 
   さて私の周りでは、ラボの学部生の一人は、投票を呼びかけるボランティア団体に参加し、当日人々が投票に行くように電話で呼びかける仕事をしました。彼女の話によれば、今回の選挙では多くの学生がこのようなボランティア活動に参加していたそうです。隣のラボのテクニシャンはオバマ候補のTシャツを着てラボに登場しました(写真)。構内では他にも複数、候補者の名前入りキャップやTシャツを着ている人々を見かけました。
 

    また、ラボの大学院生の一人は、家でelection partyを行いました。皆で
  開票結果をテレビで見つつ、飲み食いするわけです。アメリカでは州ごとに得票数
  を計算し、州内での勝者が特定のポイント数を獲得する仕組みになっています。
  例えば人口の多い州、カリフォルニアで勝つと55ポイント獲得することができます
  が、ハワイではわずか4ポイントとなります。そして、これらポイントの合計点が多
  い方が次期大統領となるわけです。投票は通常、夜7〜9時には閉め切られ、その
  後すぐに開票結果がでます。しかし時差の関係で、州により結果が出るのに3〜4
  時間の差がでます。通常、東海岸の州から結果が出始め、中部、西海岸へと移っ
  て行くわけですが、その中継がテレビで放映されるのです。

  パーティー主催者は、写真のようにOBAMA 対 McCainの獲得ポイントを示すポスターを作成しました。両端に各候補者のポイントバーがあり、中央には各州の名前とその保持ポイント数が書いてあります。ニュース速報で州ごとの結果が出るたびにどちらかのバーを埋めて行くというわけです。全ポイントの過半数を占めるには、270ポイント必要です。自分の応援する候補者が勝利するのに、あとどの州で勝利してどれくらいポイントを稼ぐ必要があるのか。バーを埋めながら、色々と考えを巡らせるわけです。
 

  今回の選挙では序盤、両候補の得票数が僅差でした。
しかし11時頃、カリフォルニア州でオバマ候補が勝利しました。カリフォ
ルニア州は全米で最も大きなポイントを持つ州です。これが決め手と
なりました。元々リードしていたオバマ候補の獲得ポイントが跳ね上
がり、当選が確実となったのです。私の住む州は元々、民主党が優勢
です。パーティーの参加者も全員オバマ候補を応援していました。その
ため、この当選確実の速報に場は一気に盛り上がりました。

  パーティーが終わる頃にはすっかり夜更けです。しかし、家に帰る
までの道のりでは、道端でオバマ次期大統領の勝利を祝う人々の姿
が見かけられます。黒人の人々の中には歓喜のあまり、OBAMAと書
いてあるフラッグを持って車道の真ん中を走り、踊る人々も見られま
した。今回の選挙は、歴代の大統領選挙の中でも特に盛り上がったと
言えるようです。中には海外から、この選挙のためだけに帰国する人々もいたそうです。残念ながら、私には投票権はありませんでした。しかしこのような周りのお祭り騒ぎぶりに、純粋にイベントの一つとして楽しむことができました。

 日本は大統領制ではないため、ここまで盛り上がる選挙戦は無いと言えます。今回の選挙を通して、老若男女を問わず、国中がここまで政治の話で盛り上がれることは新鮮でした。このような機会を作れるという意味では、大統領制を少し羨ましくも感じました。

 さて、来年から新しい大統領を迎えて、どのようにこの国が変わるのか。普段は政治に疎い私も、注目していきたいと思っています。
 

(コンドン)
2008年11月掲載

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