「アメリカ東海岸留学日記」 第8回


 

> 2008年 6月 26日  「春を通り越して夏の到来」

  冬の長いこちらNew England地方では、春の到来は
最も待ち遠しいイベントの一つです。春の到来を待ちわびる言葉の
一つとして、「April shower brings May flower (4月の雨が5月の
開花に繋がる)」という言葉があります。4月はまだ寒く、冷たい雨の
多い季節です。しかし、それを乗り越えて一斉に花咲く暖かい5月が
迎えられるのだから、4月の雨も歓迎しようという意味です。

 さて、5月になると朝晩はまだ10度前後と肌寒いにも関わらず、
日中は25度を超える日差しの強い日がでてきます。日本に比べると湿度が低いので昼と夜で温度差が激しくなります。こちらでは少しでも暖かくなると春を通り越して夏の装いになります。強い日差しの元、半袖、短パンに、サンダルという格好で町中を歩く学生達を多くみます。しかし、日によっても寒暖の差が激しいので、ある日は夏服かと思うと、次の日は冬用ジャケットを着込まねばならないこともしばしばです。私は、日本から春物のコートやジャケットを持ってきたのですが、天気の良い日には暑すぎ、悪い日には寒すぎるということで、一年以上たってもいまだ使う機会に恵まれていません。

 このようにNew England地方では急激に春を通り越して夏がやってくるので、木々や花々も一斉に花咲くことになります。さくらの木もあるものの、5月の暖かい日に一斉に開花したと思ったら、月末には花が散り、6月にはすっかり青々とした葉の生い茂る夏の木となります。それでも、この地方はアメリカの中では四季に恵まれていると言われています。一瞬ではありますが、夏の始まりには花の開花と、冬の始まりには紅葉が見られるためでしょう。
 

  また、こちらではサマータイムが採用されており、夏時間の間
は1時間遅れとなります。つまり冬の5時は夏の6時となります。それ
も手伝って、冬は4時頃には日が暮れますが、夏は夜9時くらいまで
明るくなります。夏の間は、仕事の後もまだまだ日が高いので、人々
は街に繰り出したり、セーリングやカヤッキングなどのアクティビティ
に勤しみます。仕事面でも、特に企業に勤める人々の間では頻繁に
仕事関係のパーティーが開かれます。そして週末はビーチに出かけ
たり、キャンプをするのが一般的です。また、友人宅でのBBQパー
ティーはほぼ毎週どこかで行われます。私の周りでもポスドクの友人のほとんどはBBQグリルを持っています。冬と比べると、このように人々の活動レベルは非常にあがるわけです。まさに「夏を満喫するのに忙しい」といった具合です。

 私も今年は友人の誘いを受けて、セーリングのレッスンを受けることになりました。日本でセーリングというと稀なイメージがありますが、東海岸ではポピュラーなアクティビティの一つです。少なくとも小さなボートの乗船は多くの人が経験したことがあると言えるでしょう。自分で操船する場合も、こちらでは非営利組織のセーリングクラブも多く、年間200ドル(2万円くらい)ほどのメンバーシップを払うだけで、1年間ボートを好きな時に出す事ができます。大学院生やポスドクのように数年ごとに異動する若い人々には、ボートを自分で購入するより、クラブに所属してレンタルをする方が人気あるようです。先に述べたように、夏は夜9時頃まで明るいため、5、6時まで働き、そのあと友人達とセーリングに行く事もできます。
 

  キャンパス内では、6月から9月初めまでは夏休みということで、学部生達の姿が消えます。こちらの学部生は寮に入っている学生が多いのですが、なんと夏休み期間中は寮を追い出されてしまいます。学外の高校生などがサマープログラムで部屋を使用するためです。そのため、ほとんどの学生は帰郷することになります。荷物もまとめて出さねばなりませんし、研究などで帰郷できない学生は学外に短期間だけ部屋を借りなければなりません。学生達にとってはなんとも不便な話です。しかし1、2年生の間は大学の規定で外に住む事を許されず、また3、4年生になっても、親が心配するので寮に住むことを余儀なくされる学生達も多くいます。こちらの学生達は日本の大学生のようにアルバイトをする時間的余裕がなく、親に年間数百万円の授業料に数百万円の家賃と食費を払ってもらっている状況です。そのため、日本の学生と比べると、行動範囲はまだまだ親の目の届く範囲となる人が多いようです。日本ではアルバイトでためたお金で、休暇中に学生同士で旅行に出かけたりもしますが、こちらでは家族との旅行に費やす方が一般的となります。

     さて夏休み中のラボ内では、ポスドクや博士過程3年目以降の大
   学院生は研究に勤しむだけなので、特に生活に変化はありません。
   しかし教授や大学院1、2年生は授業がなくなるので、全ての時間を
   ラボのために使うことができます。教授達はこの機会を利用してグラ
   ントの申請や、ラボのメンテナンスに取り組みます。特にこの時期
   は、大学院1年目のローテーションを終えた院生が正式にラボに加
   わる時期です。そして反対に、外部の大学院に進学することを決め
   たテクニシャンや学部生がラボから去る時期でもあります。5月から
   6月にかけてプロジェクトの引き継ぎ、振り分け、ラボ内のルールの再編成などが行われます。
 

  研究者の夏休みは、日本と同様フレキシブルで、通常
みな1−2週間の休みを夏のどこかでとります。私のように海外から
来た人間の場合は、ビザの更新という口実も手伝って、通常3週間
程度の休みをとることができます。今年、私は日本で少し実験を
行う必要があるので、結局5週間ほど帰国することになりました。
5週間は例外的に長い休暇と言えますが、休暇の取り方や長さは、
ボス次第と言えます。

 このように、アメリカでの休暇の取り方はほぼ日本と変わらないと思います。しかし、唯一違うと思うのは、こちらではきちんと休暇をとって家族と過ごすことが奨励されていることでしょうか。休暇をとることに対して引け目を感じることはなく、むしろ休暇をとらないと少し変わった人だと思われるくらいです。私の帰国についてもラボでは当然という印象で、とる当人としては切り出しやすい雰囲気のため、助かりました。

 こちらでは日本に比べると、仕事とプライベートの境界がよりはっきりしており、仕事仲間とつるむことはあまりありませんが、その分、家族との時間を大事にするように勧められることが多いように感じます。そして、日本人があまり家族との時間を過ごさないことを理解できないと言われることもあります。私個人の意見としては、日本では職場が職員を家族のように扱うので、職場全体が大きな家族のようになるためではないかと思います。しかし、このような根深い文化の違いを、拙い英語で説明するのはなかなか難しいものです。

 さて、文化の違いはさておき、いずれにしろ大手をふって休みがとれるのは良いことです。こちらの人にならって、私も夏を満喫しようと思います。みなさんも、良い夏を過ごされますように。写真は、大学近くのセーリングクラブとその後のBBQの様子。初心者は5人乗りの小さなボートの操船から始めます。そして、こちらでBBQといえば、もちろんハンバーガーです。
 

(コンドン)
2008年7月掲載

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