「アメリカ東海岸留学日記」 第2回



 

> 2007年 6月 24日   「アメリカの住宅事情」

 こんにちは、「コンドン」です。今年の4月からアメリカの東海岸、ボストン近郊の街でポスドクをしています。今回はアメリカの住宅事情について紹介してみたいと思います。

  といっても、アメリカは「United States(州の集まり)」の名にふさ
しく、法律や税制まで州によって違うので、家もアメリカの東と
西、北と南で大きく異なります。そこで、私の在住する地域、
ニューイングランドの一般的な住宅事情について話してみたいと
思います。ニューイングランドはアメリカ北東部の6州(メイン州、
ニューハンプシャー州、バーモント州、マサチューセッツ州、
ロードアイランド州、コネチカット州)を含む歴史的にも古い地域
です。そのため、街の作りもヨーロッパに近く、車社会のアメリカ
にも関わらず道幅は狭く、時に曲がりくねっており、駐車スペース
も非常に限られています。また歩道にも石畳が多くみられ、建物
も1800年代から1900年代に建築された建物を繰り返しリフォー
ムして使用することが多く、散歩中にも様々な造りの家を見ることができます。

  私の住む街はアメリカがアメリカとして独立する以前から開拓されていた古い街の一つですが、ここでは日本で通常想像する「アパート」はほとんどありません。こちらで「apartment」というと、多くが一軒家の1階か2階を借りることを意味します。もちろん、集合住宅型のアパートもダウンタウンに行けばなくはないですが、街の景観と古い建築物の保存のために、街の住民が意識してそのような建物をなるべく建築しないように心がけているそうです。また80年代、90年代に建築された建物は土台がしっかりしており、内装のリフォームと外装のペンキの塗り直しだけで、十分美しく機能的になるようです。ですからこちらで「新居を購入する」といっても、まっさらな土地に新しく家を建てるということは滅多にありません。購入時の大きなポイントも、いかに良く保存され、リフォームされているか、であって、家の建築年数が家の値段を左右することはまずありません。このような事情と近年の土地のレートの上昇が手伝って、5年以上この街に住む場合は家を借りるより購入した方が安上がり、という意見も良く耳にします。
 

   売買される家は、家一軒丸ごとの場合は「house」、一
   軒家のワンフロアのみの場合は「condominium」と呼ばれます。
   こちらの一軒家は2階〜3階建てが通常ですが、2世帯•3世帯住
   宅式にキッチン、バス•トイレがフロアごとに完備されています。
   つまり、住居人とシェアするのは表玄関(各階に個別の鍵付きド
   アがさらにある)と、駐車場、地下(洗濯スペース)となります。
 
     一方賃貸の場合ですが、多くは、コンドミニアムのようにワンフ
   ロアを丸ごと借りる場合、或はワンフロアをさらに誰かとシェア  
                                                       するルームシェアの2つのタイプに分かれます。ルームシェアの場合でも、家のデザインによっては2 bedroom 2 bathroom(寝室とバス•トイレが2つずつ)という場合もあり、この場合は、リビングとキッチンをシェアするだけなので、かなりプライベート度が高いと言えます。さらに、full furnished (家具付き)かunfurnished(家具無し)を選ぶこともできます。Full furnishedの家具は、オーナーの使い古しの家具や道具であることも多く、場合によってはスプーン一つまで揃っていることもあります。またunfurnishedの場合でも大きな家電(冷蔵庫、オーブンなど)は通常据え付けです。この使い回し制度は私のように数年単位で移動する職業や金銭的に苦しい学生には非常に便利ですし、古くても使えるところまで使うというのは良い習慣だと思います。渡米の際にお金を払って、まだ使える全ての家電を処分しなければならなかった私としては羨ましい限りです。
 

 さて、家賃の支払い形式はというと、光熱費込み/別の2種類
があり、また土地の少ないこの地域では駐車場も有償スペース
ということで、込み/別の2種類があります。入居時に一月分
をdepositとして払い(退去時に不具合がなければ返還される)、
月々の支払いは、毎月末に翌月分をチェックでオーナーに支払
うのが一般的なようです。家賃の高さは日本が一番、と思うの
はアメリカ人でも同じようですが、実は意外とこちらも生活費に
お金がかかります。もちろんこちらのほうが天井の高さやスペー
スは一軒家仕様なので大きいのですが、one bedroom(寝室1つ、
キッチン、リビング•ダイニング)でも、大学周辺の安全な地域と
なると私の地域では$600-800ほどします。それに光熱費、ケー
ブルTV料金などが月々$200-300、駐車場が含まれていない場合は追加で$50-100ほど必要になります。

  ということで、まともな一人暮らしにはまず$800-1000は見なければなりません。ルームシェアする場合は、光熱費込みで$500-900とかなり効率は良くなるものの、それでも日本の一般的な賃貸費用と比べると決して安いとは言えませんし、前述したように新築の家はまずないので、水回りやメンテナンス不足など問題を抱えた家も多くみられます。さらに、アメリカの場合、治安の良い地域と悪い地域があり、良い地域では少々高くとも「安全料金」として人々は好んで住むようです。考えれば当然のことですが、「安全」は高くツクものだ、と安全な国から来てしまった私は様々なところで実感します。

 

   最後に、家の内装についてですが、水回りと防音効果については
   日本のアパートを恋しく思い出さなければなりません。ただ、キッチンに
   ついてはいくつか面白い特徴があります。一つは「in-sink erator」と呼
   ばれるシステムで、シンクから直接生ゴミを捨てることができます。こち
   らの比較的新しい家には通常備え付けてあるそうです。皿洗い時にボ
   タンを押すと、シンクの底に溜まった生ゴミが中のカッターによって刻ま
   れ、水と一緒にそのまま外のコンポストに運ばれ、そして、いずれは自
   然肥料として土へ帰るというシステムです。これならゴミ捨て場で生ゴミが腐って臭うというトラブルもなくなりますし、自然にもやさしいわけです。他には、大きなオーブンがどの家にも備え付けであることでしょうか。こちらでは自分でパンやケーキ、パイ、ピザを焼く人も多くみられますが、大きなオーブンを使えば簡単に作ることができます。特に菓子類は、日本で手に入るレベルの物はアメリカでは中々手に入らないので、私もこちらに来てからもっぱら自分で作るようになってしまいました。

  その他の特徴としては、各階に大きめのポーチがあること、またback yard(裏庭)があることがあげられます。夏場になるとポーチか裏庭で、一家に一台はある(らしい)BBQセットを出してホームパーティをすることが多いようです。自分の部屋+地下室+裏庭を利用することができるという意味では、多くの物を保管することができます。隣人にはカヤックやサイクリング用の自転車、サーフボード、キャンプセット、スキー道具など余暇に必要な大型の道具を地下室に保管する人も多くみられます。また裏庭やポーチで家庭菜園を行う人、休日にテーブルを出してお茶や食事を楽しむ人もみられます。一人暮らしでも日本の一軒家暮らしに近い生活スタイルを送ることができるという意味では、なかなかよい住居システムかもしれません。一方で、隣人とのシェアや助け合いが日常的に必要となります。良い隣人を持つか、そして良い隣人になれるかどうかが毎日を快適に過ごせるかどうかのキーとなります。

  写真は、私の家の近所の町並み、1900年代に建てられた家の例(元の建築主の名前がエントランスに貼ってあります)です。
 

(コンドン)
2007年7月掲載

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