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「昼休みのベンチI」 第4回 別紙

(※本記事は2007年10月に書かれたものです。提供している情報は当時のものであり、現在は変わっている可能性があることをお含みおきくださいますようお願いいたします。)

特許出願~登録までの流れ

1. 出願 特許願、特許請求の範囲(クレーム)、明細書、図面および要約書などの書類を特許庁にできるだけ早く提出します。書式は、特許庁ホームページや「特許出願のてびき」社団法人発明協会をご覧ください。書類提出までは、学会発表、論文での公表はしないようにします。また、この時に、研究機関(出願人)へ特許の権利を譲渡するかどうかを決めたり、その時、発明者の権利配分などを契約書決めます。

2. 方式審査 特許庁で書式どおりかのチェックを受けます。電子出願であれば、出願終了と同時にこの審査は通過したことになります。
先願主義ですので、とにかく、ここまでは、早く行うことが重要です。
また、外国出願について、この時期に、検討をしておくことが必要です。特許の国際化がようやく動き出しており、PCT国際出願制度が利用できるようになっています。この方法のメリットを記載しておきます。PCT出願は、国内出願後、1年以内に、行う必要がありますが、翻訳する必要がなく、日本語でよく、台湾を除くWIPO加盟国137ヶ国に一度に出願したことになります。その際、PCT出願申請費用などは、20数万円程度が必要ですが、数か月以内に、国際調査見解書、国際調査報告を提供してもらえます。その結果を見て、30ヵ月後、どの国に出願するかを決めればよく、その調査結果は、国内審査にも利用することが出来ますので、大きなメリットとなります。海外出願は費用がかさみますので、発明者が主体となって(ベンチャー)事業化を進めるか、製薬などの企業との共同開発で、出資していただくのがよいでしょう。この30か月の間に交渉しておきます。
国内優先権主張出願も同様に、研究計画から同じ概念から新たな発明が、追加されると予測される場合、1年以内に出願することを検討しておくことがよいでしょう。

3. 出願公開 出願日から1年6ヶ月経過すると、公開広報で、公開されます。特許情報プラットフォームで、確認することが出来ます。

4. 審査請求 出願から3年以内に誰でもが審査請求を行うことが出来ます。したがって、1年6ヶ月経過後、公開されると第三者も審査請求をすることができることになります。誰も審査請求しなければ、取り下げたものと見なされてしまいます。戦略的には、1年以内に、国内優先権や海外出願などの関係を整理し、より統合的に強化した時点で、審査請求を自ら行うのが良いと言えるでしょう。

5. 実体審査 審査官が特許要件(新規性、進歩性、産業上の利用など)を満たしているかを調べます。

6. 拒絶理由通知 審査官が拒絶の理由を発見した場合は、それを出願人に知らせます。これを受け取るとがっかりしますが、特許事務所から、何らかのコメントをもらえる場合が普通です。(丸投げして来る事務所は、ちょっと・・・。)

7. 意見書・補正書 拒絶理由通知書を受けた出願人は、反論を意見書として提出したり、特許請求の範囲や明細書等を補正する機会が与えられます。拒絶理由通知の内容の各項をよく読めば、その対応策が見えてきます。決して、全面的に拒絶された訳ではなく、ここの箇所を削除なり、限定なり、加筆すれば、通しますと読める場合が多いのです。この審査官とのやり取りで、戦略の修正を行い、新たな特許出願で補強するとか、特許査定になる前でしたら、特許を分割して、特許請求範囲を強固なものにすることができます。

8. 特許査定 こうしたやり取りの後、審査官が拒絶理由を発見しなかった場合に、特許査定となります。

9. 登録 その後、出願人が特許料を支払うことによって、初めて、特許権が発生します。この支払を忘れて、大事な特許が無効になったケースがあるようです。
 研究者が、主体的に加筆、修正を行う重要なところは、出願、意見書・補正書、国内優先権主張出願、分割出願、変更出願や外国出願の判断などになります。それぞれ、期限がありますので、ご注意ください。

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具体的な手続きについて

1. アイデアの内容が職務発明にあたるのかどうか。また、研究機関が、権利を保持する意向があるかどうかを確認します。対象とならない場合は、個人で、出願をすることになります。その場合は、弁理士事務所以外に、全国の社団法人発明協会各支部に相談するとよいでしょう。その場合、特許出願の事前手続きに、識別番号付与の請求、予納(特許出願16,000円)など事前手続きが必要となります。

2. 職務発明に相当する場合、日本版バイドール条項(産業活力再生特別措置法第30条)により、通常、所属の研究機関に知財権が与えられます。研究機関(出願人)へ特許の権利を譲渡する条件を決め、譲渡書を交わします。共同発明者との寄与率も決めてきます。また、この特許を用いて、自分で事業化をしたい場合、例えば、権利の50%を所有するとか事業化に参加することを条件に入れるなど、その旨を条件に加筆しておくとよいでしょう。この発明で、みずからが事業化を考えないのであれば、所属機関で、特許手続費用や弁理士代行業務の費用をすべて支払ってもらえ、権利を幾分残せる戦略が良いと思います。

3. 先行文献や自らの学会発表より内容が公知になっていないか確認する。特許法30条での新規性喪失の例外はありますが、それも、日本、米国、カナダなど数カ国に限られ、欧州などでは、認められず、又、特許請求範囲も制限され、権利は大きく縮小します。特に、物理化学的な数字の記載が公知であれば、その1点近傍となり、適用範囲は、極端に制限されますので、出願までに学会発表は避けるべきです。
国際特許分類を調べて、先行特許調査する程度はやっておくことが必要です。弁理士事務所でも調べてもらえますが、自分でもやっておくことが周辺技術を知り、勉強になります。詳しくは、特許庁ホームページの、「制度・手続」「資料・統計」等、をご参照ください。


4. 微生物、ベクターなどを寄託する場合、保管用の菌株を用意し、寄託番号を受理しておき、特許明細書に記載します。通常は、特許微生物寄託センターを利用します。

5. 特許の枠組みを決めます。特許には、物質特許、用途特許、製法特許、ビジネスモデルなどに、分類されます。通常、物質特許と用途特許、物質特許と製法特許、用途特許とビジネスモデルなどと組み合わせて、広範囲に権利を取るようにします。さらに、理化学的な数値範囲を記載するパラメーター特許やある製法で製造した新規物質と同じ特性を有する物質すべてに及ぶプロセス特許(プロダクト・バイ・プロセス)など特許請求範囲を工夫して、広範囲に権利を取るよう方法もあります。関係者で十分検討しておく必要があります。

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特許を作成するにあたって


1. 願書: 整理番号、出願日、国際分類番号、発明者、特許出願人、代理人などを記載します。国際分類番号は、上述の特許電子図書館で、調べて記入します。


2. 特許請求の範囲: 特許出願人が特許を受けようする発明の権利範囲を特定する重要な、書類になります。発明の核となる構成要素を軸に、最上位概念を全体マップにして、数学の集合(含む・含まない)の円を描きます。例えば、物質と用途では、重なった2つの円ができることになります。先行文献や先行特許がある場合は、その部分を含まないとします。一般的な例として、【請求項】を大きな権利範囲順に・・・からなることを特徴とする請求項1記載の・・・として、【請求項2】、【請求項3】と記載し、権利範囲を制限して行く、引用形式で記載します。こうして、特許の権利をどの段階まで許容してもらえるかを提示することになります。「バイオ特許の実務」辻丸光一郎著に、その他の形式が記載されていますので、ご参考ください。なお、余計なことかもしれませんが、請求項を増やすと、特許料の費用がかさむことになります。

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