コーヒーブレイク

「昼休みのベンチI」 第1回

『バイオ研究者の知財戦略−アイデアの作り方からその活かし方-』(第1回)  <2007年4月>

  政府の科学技術の基本戦略にある「イノベーション」という言葉を、最近、盛んに目にするようになりました。それは、研究者個人の視点に立てば、それぞれ個人は、知財戦略を身に付けて、「出る杭」になろうと言うことではないでしょうか。長年、企業でバイオ研究開発、新規事業に携わり、現在、官のあるプロジェクトを支援、推進している者が、そんな意欲的なバイオ研究者の皆さんの一助となればと思い、書き始めました。

  アイデアは、作れるものではなく、突然、ふっーと、浮かぶもので、作り方なんか無いとお叱りを受けるような題ですが、頭の中に蓄積された記憶が、神経細胞の電気的なゆらぎにより、融合して、斬新なアイデアは作られるようです。

  Kary  Mullis博士がPCR遺伝子増幅技術の発見(1993年ノーベル化学賞)は、ガールフレンドとシビックでドライブ中に浮かんだというのは有名な話ですが、これも、シータス社の研究室からの開放感と車の振動?で、神経細胞の電気的なゆらぎが大きくなったということでしょうか。

★今月の参考図書 -1-

『マリス博士の奇想天外な人生』
  Dancing Naked in the Mind Field
  キャリー・マリス(著)、  福岡 伸一(訳)
  早川書房

  ライフサイエンスの研究をしている皆さんも、当然、アイデア(ウー)マンですよね。中には、いやー アイデアは、どうも苦手でという人も居られると思いますが、ここで言うアイデアとは、ちょっとした思いつきも立派なアイデアです。そのアイデアを、採択し、実践していくか、破棄するかどうかは、あなたご自身が、決めることです。アッ!そうだ、面倒だ、この試薬も混ぜちゃえ!などもアイデア。これは、ちょっとどうかな??? ・・・でも、Mullis博士は、毎回、添加していた常温酵素に変えて、耐熱性酵素を混ぜましたね。ちょっとした思いつきですよね。アイデアで、研究生活が豊かになる方法を実践して行きましょう。

  古くは「頭の体操」多湖輝、「脳内革命」春山茂雄、最近では「バカの壁」養老孟司、「ひらめき脳」茂木健一郎、「脳はなにかと言い訳する」池谷裕二など、頭脳に関するベストセラーは多いですね。やはり、皆さん、自分の頭脳には、自信がない?のではなく、関心があるのですね。これには、脳を鍛えて、将来の認知症を予防したい人たちの思いも後押ししているようです。
 
  「あの人は頭の回転が速い」、「どうも、今日は頭が回らないなあ」「想いを廻らす」「俳句を一句ひねってみようか」など、実に、日本語は、脳の機能をよく捉えています。脳の大脳皮質上をシナプスのネットワークができ、そこを、電気信号が、情報伝達物質が、活発に活動している様子が見えているかのように、これらの言葉は、よく言い当てています。余談ですが、最近は、「右脳俳句」という集まりまであるようです。

 では、脳の中で、アイデアは、どのようにして生まれるのでしょうか。

 1988年に書かれた“Technique for producing ideas”「アイデアのつくり方」(James Webb Young著 今井茂雄訳)の小さな100ページ程度の本があります。しかも、解説がその内、40ページありますから、中味は、たった60ページほどです。

★今月の参考図書 -2-                  

『アイデアの作り方』
  ジェームス・W・ヤング 著
  今井茂雄 訳、  竹内 均 解説
  CCCメディアハウス

  ヤング氏は、いろんな職を経験し、アメリカの大手広告代理店トムプソン社の最高顧問をされていた方ですが、「アイデアのつくり方」の思考は、あらゆる分野で、通用し、今でも、世界中で、売れ続けております。アイデアは、神秘的に、湧き上がってくるのではなく、工業製品と同じような5つの工程で作られると述べております。 

  以下に、原訳文のまま、記載します。
第一 資料集め ― 諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第三 孵化段階。そこでは諸君は、意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四 アイデアの実際上の誕生。分かった!見つけた!という段階。そして
第五 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、発展させる段階。

  それでは、その第一 資料(有用な情報)集めについてです。
   当面の課題解決のためのアイデアの元になる情報を集めることは、その課題に関する最新の論文を読んだり、自分の新しい実験データを眺め、解析したりすることです。研究者の皆さんは、日常の大半をこの有用な情報集めをしている訳ですから、ここは、専門家ですね。机上でのインプットだけでなく、視覚から、実験操作や研究での試作物の形、色、速度、臭覚から匂い、触覚から温度や硬さ加減、味覚で、甘味、辛味などの情報などの五感の情報も大変、重要です。自分自身の総力(体力)を使って、見慣れた結果やデータの中に、視点を変えて、特殊性、意外性を見出すまで、掘り下げることが必要のようです。

  これらの情報のインプットを、より強固するには、「なぜこうなるの」「どうして」「ややこしい!もっと、簡単にならないの」など意識的に行うこと、つまり、必ずやり遂げる意思、旺盛な好奇心が重要な要素になります。大事なところは、ナマ情報を五感でインプットすることです。したがって、五感で感じることのできる現場で無ければ、活きのいい情報を得にくいようです。

  最近の研究では、試料の調製が終われば、後は、最新鋭の分析機器、データソフトにお任せでは、この自らの五感を発揮するところが少なくなっているのではないか、と気になるところです。

  もう一つ、一般的知識の貯蔵、膨大な過去の経験(特に失敗経験が大事で、大いに反省をしておきましょう、見方を変えれば、失敗ではないことが多いようですから)の情報もベースとして、絶えず、豊富にしておくことを心がけるとよいようです。専門以外の分野でも好奇心をもって、知る、体験することで、大きなアイデアの泉を広げることになります。でも、Mullis博士のように好奇心でLSDまで手を出すのは、問題外です。(本人はLSDの有効性を主張していますが。)

  大学受験や資格試験の、五感で感じることの少ない暗記中心の学習でも現場にいるイメージを持って、学習することは、記憶に効果があるようです。若いときに、好奇心をもって、基本的なさまざまに事象を、インプットしておく、興味を持って勉強しておくことは、その後の思考の幅を広げるように思います。

  若きエジソンは、1.5mに積み上げた化学書を6週間で読破したとのことです。若いのころの好奇心で獲得した記憶は、いつまでも、鮮明によみがえることができます。

  いくらなんでも、頭の中にすべての記憶を納められる訳には、いきません。それには、ありきたりですが、紙切れ、ポストイット、手帳、メモカード、日記、新聞や雑誌の切り抜きや写真などに残しておき、気ままに、取り出して、眺めたり、書き出したりすることで、思わぬ活用ができることがあります。いつも、目に付くところに、放って置くことですね。机の上が散らかっていることの言い訳には、使ってはダメですよ。

  では、次回、又、お目にかかりましょう。

(昼休みのベンチ)
2007年4月掲載

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