コーヒーブレイク

「アメリカ東海岸留学日記」 第31回


 

> 2012年 7月 30日  「夏のレクリエーション」

   日本は今年も猛暑が続いているのでしょうか。アメリカ東海岸も暑い日が続いています。といっても、先日日本から学会で来た友人には「これで暑いと言っていたら日本では暮らせない」と言われてしまいました。こちらアメリカ東海岸北部(ニューイングランド地方)は緯度でいうと日本の北海道近くにあたり、確かに夏も湿度が低く涼しいはずです。しかしこちらに5年も住むと体が慣れてしまうのか、夏はやっぱり暑く感じてしまいます。人間の体の順応力はすごいもので、いつのまにか真夏の日本では生きて行けない体になってしまったのかもしれません。

   さて日本の夏のアクティビティと言えば海水浴だと思いますが、こちらの海は夏でも13−18度程度までしか上がりません。そのためビーチでのんびりすることはあっても、実際に水に入って泳いだり、ダイビングやサーフィンなどのアクティビティをすることはそんなに一般的ではありません。代わりにむしろ山へ行き、家族や友達でキャンプやハイキングを楽しむ人が多いようです。車社会のアメリカですので、キャンプサイトやハイキングサイトまでの物の移動も簡単ですし、高速道路は無料で道も広く良く整備されているのでアクセスが格段に楽です。キャンプする施設も充実しており、場所によってはハイキング後に泳げる池にライフガードまで揃えていたります。ニューイングランド地方は、ロッキー山脈に比べるともちろん小さいですが、それでも大小数千メートル級の山々が複数あります。各々の山に特徴があるので、人によっては夏休みの一週間を丸々かけて、複数の山をキャンプしながら踏破する人もいます。また、アメリカのハイキングで特徴的だと思ったのは、犬を連れて登頂する人が結構多いことです。犬も含めて家族みんなで休暇を過ごせる、という意味でキャンプやハイキングは夏の家族行事にぴったりなのでしょう。
 

   私は日本では中学校以来ほとんど登山をしたことがありませんでした。でもこちらに来てからは、車でのアクセスが良いことや、湿度が低くて登りやすいことから、たまに友人達と登りに行くようになりました。先日もボストンから北に車で1−2時間行ったところにある山に日帰りハイキングに行ってきました。トレイルは場所によっては岩だらけで、軽いロッククライミングのように岩にしがみついて登ったりもします。そして標高が高くなってTree Lineを超えると植物がなくなり、とたんに日差しが強く帽子とサングラスが欠かせなくなります。強い紫外線は登山の難点の一つですが、最近の登山グッズはハイテクで、UVカット力に優れていてかつ汗をすぐに乾かしてくれる素材の服が開発されているようです。周りにアウトドア専門店が多いこともあり、ウインドウショッピングのつもりが、私もついついハイテク衣服や器材を色々と購入してしまいました。

   頂上は植物がなく岩だらけですが、その分見通しと風通しがよく、緑と池の多いニューイングランドの素晴らしい景色を見下ろしながら涼むことができます(写真)。頂上で昼食をとり、少し昼寝をして下山しました。下山後は、もちろんみなでご飯とビールという具合で、達成感と心地よい疲労感が得られます。ハイキングは足だけを使うイメージがありますが、気づかないうちに意外と全身を使っています。温泉に入った後のように翌日体がすっきりするので、デトックス代わりにもなると思います。日本でも、山登りが若い人々にも人気が出て来ているという話を聞いたことがあります。今や誰でもパソコンの前に座って作業することが多い時代です。自然に触れながら全身運動できるハイキングは、老若男女問わず、心身をリフレッシュさせるために効果的なアクティビティになってきているのかもしれません。
 

   また登山は、研究と似ている部分があるのかなと私は思います。頂上は見えなくても信じて前に進むところや、グループで一緒にゴールを目指して励まし合いながらも、一人一人が自分の力で一歩ずつ歩を進めて行くところなど、研究にも共通する部分があるかと思います。誤解を恐れずに言うなら、それほど協調性を必要としない、という意味でもハイキングは研究者向きかもしれません。他にも、こちらの研究者の間で人気のアクティビティには釣りがあります。私は個人的にはそんなに好きではないのですが、周りの釣り好きの人によれば、忍耐強く待つところが研究に似ているそうです。こちらでは海釣りも安く簡単に行けるので、人によっては毎週末行く人もいます。通常の船釣りではカレイやメバル、タイを釣ることもできますし、イカの夜釣りや、変わったものではマグロの一本釣りなどにも挑戦できるそうです。といってもあくまでレクリエーション目的なので、マグロが実際に釣れても成果は船長さんに大方持って行かれるようですが…。
 

   釣りの利点は、もちろん獲得した成果を家に持って帰れることだと思います。捕れた魚は通常、船のスタッフの方で希望通りにさばいてくれます。ただ研究者は料理が得意な人が多いのか、そのまま持って帰って自分でさばく人が大半のようです。私も以前、釣りの成果を振る舞う会があるということで、友人宅にお邪魔したことがあります。釣りたての魚をその場で鮮やかにさばいてもらい、こちらでは珍しく新鮮なお刺身をいただきました。家族や友人に直接自分の成果を振る舞えるというのは確かに釣りの特別な特典なのかなと思います。

   日本はこれからまだ暑い夏が続き、そのあとは紅葉の素晴らしい秋がやってくるかと思います。一方、こちらは9月初めには涼しくなり、その後すぐに寒く暗く長い冬がやってきます。つかの間の夏を精一杯楽しむために、この時期はみな研究に励みつつもレクリエーションにも大忙しです。私もこの夏の終わりまでには、この地方で最も高い山への登頂を目指そうと思っています。
 

(コンドン)
2012年8月掲載

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