実施例
Blend Taq 実施例3 ターミナルトランスフェラーゼ活性に影響する要因について
Blend Taq®は、TAクローニングが可能なPCR酵素です。効率よくクローニングを行うために、ターミナルトランスフェラーゼ(TdT)活性に対する酵素量、プライマー配列の影響について確認しました。
【方法】
1. TdT活性
FAM標識したセンスプライマーと5'末端配列がG、A、T、Cである4種類のアンチセンスプライマーを用いてヒトβ globin gene 150bpのターゲットをPCRにて増幅し、ABIモ デル3110 Genetic Analyzerにて解析を行いました。
センスプライマー:
5'-FAM-AACCCACAAAGCAGAATAAATACCA-3’
アンチセンスプライマー:
5'(- G, A, T, C)AAGGGCAAGGGATAGCACAAGT-3’
反応液組成 : | サイクル条件 : | ||||||
ゲノムDNA | 100ng | 94℃, 1min. | |||||
dNTPs | 0.2mM | ↓ | |||||
プライマー | 0.2μM | 94℃, 30sec. | 30 cycles | ||||
酵素 | 1.25U (Blend Taq®) | 55℃, 30sec. | |||||
2.5U (rTaq) | 72℃, 30sec. | ||||||
↓ | |||||||
反応液量 : 50μL (bufferは添付bufferを使用) | 72℃, 1min. or 10min. |
2. TAクローニング
5' 末端配列がGACTである4種類のプライマーセットを用いてヒトβglobin580bpをターゲットとしたPCRを行い(伸長 時間1分)、増幅産物を市販キットを用いてTAクローニングに 供し青白判定にて効率を求めました(ライゲーション時間30分)。
センスプライマー:
5'(- G, A, T, C)GAGTAAGAGACCATTGTGGCAG-3’
アンチセンスプライマー:
5'(- G, A, T, C)AAGGGCAAGGGATAGCACAAGT-3’
【結果および考察】
1. プライマー5'末端配列への1塩基付加による影響
図1にBlend Taq®、図2にrTaqで各プライマーセットを用いてPCRした増幅産物の解析チャートを示しました。0はター ゲット長、+1は1塩基付加された位置を示します。Blend Taq、rTaqともにアンチセンスプライマーの5'末端配列への 1塩基付加による影響はG>A>C>Tでした。
またrTaqではPCRサイクル後の伸長時間を延ばすことにより、1塩基付加された増幅産物が明らかに増えるのに対して、 Blend Taq®では大きな効果差は認められませんでした。これはBlend Taq®の3'→5'エキソヌクレアーゼ活性の影響であると思われます。
ピーク面積から換算したBlend Taqでの1塩基付加率は G=89%、A=83%、T=41%、C=64%でした
2. 酵素量の影響
次に最も1塩基付加の少ない5'末端配列がTのプライマーを用いて酵素量の影響を調べました。
PCR反応液中に0.6U、1.2U、2.5U、5.0Uの酵素を使用してPCRを行い解析を行いました。図3にBlend Taq®、図4 にrTaqの結果を示します。
Blend Taq®では酵素量による極端な差は見られませんでしたが、rTaqでは酵素量に依存して1塩基付加率の上昇が見られました。また酵素量が多いほど伸長時間の効果が認められました。
3. TAクローニング
表1にプライマーの5'末端配列とTAクローニングで得られた コロニー数およびインサート挿入率(W/B率)を示しました。
Blend Taq®、rTaqともにTAクローニング効率はA>G>C> Tでした。AとGの1塩基付加効率とTAクローニング効率の乖離はGの場合A以外の塩基が付加されている可能性が考えられます。
プライマーの5'未端がAまたはGで効率良くTAクローニングが行えることが示唆されました。ここではデータを示しませんが、5'末端配列がT、Cの場合やターゲットが長い場合にはライゲーション反応時間を延ばす(4時間~over night)ことによ り、コロニー数およびインサート挿入率の向上が認められます。
今回の検討結果をフラグメント解析やTAクローニングの参考に、Blend Taq®をご使用いただきたいと思います。